JR東海、環境保全へ基本3方針 静岡県専門部会、1年3カ月ぶり協議【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題のうち、自然環境の保全について議論する静岡県の有識者会議「環境保全連絡会議」の生物多様性専門部会が25日、県庁で開かれ、JR東海の担当者が出席しての本格協議が1年3カ月ぶりに再開した。JRによる上流域の調査や資料作成に時間がかかっていた。水問題の議論はこれまで中下流域の水資源が中心だったが、県は今後、上流域の自然環境の議論も並行して進める。

JR東海が示した基本的な対応方針
JR東海が示した基本的な対応方針
静岡県環境保全連絡会議生物多様性専門部会での主なやりとり
静岡県環境保全連絡会議生物多様性専門部会での主なやりとり
JR東海が示した基本的な対応方針
静岡県環境保全連絡会議生物多様性専門部会での主なやりとり

 JRはこれまでの生態系の保全に関する考え方を整理し、トンネル湧水量の低減など三つの基本的な対応方針を示した。ただ、動植物への影響に対策を取る場所が「地上部分の改変を行う箇所」に限定すると受け取れる文言が含まれていたことから、難波喬司副知事はトンネル本体工事で影響が出る可能性のある範囲が含まれていないとして修正を強く要請。JRは応じることになった。
 JRは上流部の沢の流量をモニタリング(監視)する体制も示したが、板井隆彦部会長(静岡淡水魚研究会長)は「何をどうモニタリングするかという具体策が全くない」と批判。トンネル掘削による沢枯れを把握し、瞬時に対応できるのかが課題だと指摘した。
 県は水資源について現在、議論している国土交通省の専門家会議で、自然環境について議論することも視野に入れ、論点整理を進める方針。難波副知事は会議後の取材に「どこかで国の会議で議論する段階になる。県の会議で詰めていくことが重要になる」と述べた。
 
 ■「環境保全 具体策を」委員から指摘相次ぐ
 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、1年3カ月ぶりに自然環境の保全について議論された静岡県有識者会議「環境保全連絡会議」の生物多様性専門部会。JR東海からは従来よりも分かりやすい資料が示されたが、動植物への影響を軽減する環境保全措置に関して曖昧な部分が多く、委員からは具体的な対策を求める意見が相次いだ。
 板井隆彦部会長(静岡淡水魚研究会長)は環境保全措置の手法について「生態系を保全するには修復という方法があり、傷んだ場合の手だてが必要。具体的な保全策を考えてほしい」と強調した。
 岸本年郎委員(ふじのくに地球環境史ミュージアム教授)は、JRが上流部の沢の水量減少による動植物の生息環境などが変化、消失する可能性に踏み込んだ点を評価した。一方で「環境影響評価書では魚類などへの影響の程度は小さいとあるが、誤りを認めたということか」とただした。JRの担当者は「評価書は県全体の影響という大きな単位で見た。個別の沢で影響が出そうな場所は具体的に対策する」と説明した。
 また、三宅隆委員(NPO法人県自然史博物館ネットワーク副理事長)がモニタリング(監視)で問題が起きた場合の工事の進め方を質問した。JRの担当者は「その時のデータやモニタリング状況を逐次報告し、進め方を検討する」と述べるにとどめた。
 山田久美子委員(県立看護専門学校非常勤講師)は、影響が出そうな場所の動植物を移す代償措置の具体的な方法の説明を求めた。JR側は代償措置の具体的な説明はせず「専門家の意見を踏まえて検討する」などと答えた。

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