希少種保護へ奔走 南限の植生失う可能性【大井川とリニア 第2章 南アルプスは今②】

 「ここ数十年で、南アルプスの植物群落は急激に消失している」

オオサクラソウの種子を採取する県自然保護課の山崎由晴さん=16日
オオサクラソウの種子を採取する県自然保護課の山崎由晴さん=16日

 南アルプスに約400回の登山経験があり、高山植物の調査や保護に奔走している県自然保護課の山崎由晴さん(41)はそう語る。今回の登山で探したのは、紅紫色の花を付けるオオサクラソウ(絶滅危惧種)の種子。県内では千枚岳付近にしか生息が確認されていない。全国分布の南限に当たる。
 千枚岳山頂近くの標高2500メートル付近。登山道の脇に、さまざまな高山植物の群落が姿を見せた。
 保護と学術的調査の許可を得ている山崎さんは、群落の中からオオサクラソウを見つけると、小さな袋を添えて種子が詰まった子房を一つずつ採取していった。山崎さんがオオサクラソウの生育調査や種子採取を始めたのは2015年。採取した種子は凍結保存する。南アルプスで絶滅した場合に備えた保存策の一環という。
 手つかずの自然とは対照的に、周囲には防護柵が設置されていた。ニホンジカの食害から貴重な高山植物を守るための柵だ。
 3千メートル級の山々が連なる南アルプスには、約1万年ほど前まで続いた氷河期に分布を広げ、温暖化に伴って気温の低い高山帯に取り残されたライチョウやキタダケソウなどの遺存種が生息する。そんな場所にもシカの食害が及び、絶滅の危機にひんしている生き物もいる。
 高山植物が斜面を彩ることで知られる「お花畑」は見頃を過ぎていたが、登山道脇には品の良い小さな花が咲いていた。山崎さんが固有種であることを教えてくれた。シカの食害に加えて、リニア中央新幹線のトンネル工事による水枯れが、ひそやかに咲く高山の草花に追い打ちを掛けるかもしれない。
 「何が貴重か分からないうちに貴重なものを失っていく可能性がある」。その危機感が山崎さんを南アルプスに向かわせている。

 ■特殊な生態系、学術的には未解明
 南アルプスは日本で氷河が存在した最も南の場所。年間を通して低温になる高山帯には氷河時代に南下した動植物が生息し、植物は世界の南限の生息域に当たる種もある。
 オオサクラソウは県が捕獲や採取を規制する「指定希少野生動植物」。対象の植物7種のうち6種は南アルプスに生息する。稜線(りょうせん)近くまで森林に覆われているのも、南アルプスの生態系の特徴だ。ただ、学術的調査は進んでいない。
 JR東海は「自然環境の保全の重要性は十分に認識している」として、工事の影響が出そうな箇所に生息する動植物を、影響が出ない別の場所に移す「代償措置」を表明したものの、具体的な方法について説明はなく、実現性を疑問視する専門家もいる。

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