大井川直下「大量湧水の懸念」 JRの非公表資料に明記【大井川とリニア 第1章 築けぬ信頼①】

 リニア中央新幹線の南アルプストンネル工事に伴う湧水の県外流出問題を巡り、大井川直下でトンネルを掘削する際の施工上の留意点として「涵養された地下水が大量に存在している可能性があり、高圧大量湧水の発生が懸念される」と記されたJR東海の非公表資料が存在することが、9日までに分かった。JRが委託した地質調査会社が2013年に作成した。資料には事前のボーリング調査で「大量湧水が発生している」との記載もある。

大井川直下部分の「施工上の留意点等」の項目に「高圧大量湧水の発生が懸念される」と記された南アルプストンネルの地質調査資料
大井川直下部分の「施工上の留意点等」の項目に「高圧大量湧水の発生が懸念される」と記された南アルプストンネルの地質調査資料
大井川直下部分の「施工上の留意点等」の項目に「高圧大量湧水の発生が懸念される」と記された南アルプストンネルの地質調査資料

 ▶そもそも「大井川の水問題」ってなに?
 8月25日の国土交通省専門家会議ではトンネルと大井川が交差する部分の地質が議題の一つに取り上げられたが、JRは資料にあるような説明はせず、この資料の提示もなかった。大井川直下の地質を調べる追加のボーリング調査に否定的な見解を示しており、非公表資料の存在は今後の議論に波紋を広げる可能性がある。
 高圧大量湧水の発生の有無は、掘削作業に当たる作業員の安全確保の判断に影響する。資料の記載に基づけば大井川直下は山梨県側から掘削する必要があり、その場合、大井川の水が山梨の富士川水系に想定以上に流出する懸念がある。
 資料はトンネル付近の地質の断面図、地質に振動を加えた時の伝わり具合や強度、岩石を砕いた場合の容量などの詳細なデータを記載する。大井川直下に関しては「断層」の存在を明記するとともに、高圧大量湧水の発生が懸念される背景として「背後に(最上流部の)東俣の流域があり、東俣に沿う断層も分布する。東俣から涵養された地下水が大量に賦存(潜在的に存在)している可能性がある」を挙げた。
 JRは南アルプストンネルのうち、大井川直下の東側までを「山梨工区」として山梨側から上り勾配で掘削する計画。県境付近の大規模断層で大量湧水の発生が予想されるためだ。非公表資料はこの県境付近と同じ状況が、現行計画で「静岡工区」に位置付けられ下り勾配で掘削する大井川直下でも生じる可能性を示している。トンネル技術に詳しい専門家は大井川直下での下り勾配の掘削を「大変難しい」とコメントした。
 同社の二村亨中央新幹線推進本部次長は資料の存在を認めた上で取材に「(大井川直下は)静岡から掘るので、出てきた水は大井川に戻すしかない」と説明。静岡工区の水はポンプアップして川に戻すため、中下流域に影響しないとの立場だ。ただ、大井川直下を山梨側から掘る可能性について「工区変更したらの話」として否定しなかった。南アルプスの地質に詳しい狩野謙一静岡大防災総合センター客員教授(構造地質学)は山梨県への湧水流出量が増える可能性があるとして「追加調査の必要がある」と指摘している。

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