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JR、表流水減少の見解示さず 大井川直下「大量湧水懸念」

 リニア中央新幹線南アルプストンネルの建設を巡り、JR東海の非公表資料で指摘されていたことが明らかになったトンネル本線と交差する大井川直下部分の大量湧水流出の懸念について、同社は10月の国土交通省専門家会議でこの資料の一部を抜き出して説明したものの、流域住民の関心が高い表流水の減少に関するデータや見解を示さなかった。国交省は大量湧水の可能性に言及しつつも「気を付けて掘っていく」として明確な対策を示していない。

県境付近の大規模断層
県境付近の大規模断層

 非公表資料はJRの委託を受けて地質調査会社が作成し、大井川直下で掘削する際の留意点として「涵養(地表から地下に水が染み込む)された地下水が大量に存在している可能性があり、高圧大量湧水の発生が懸念される」と記載していた。JRは10月27日の国交省専門家会議で資料の一部を抜き出して示し「大量湧水の可能性は小さい」と説明したが、元の資料に記載されていた「大量の地下水の存在」には触れず、表流水の減少量も示さなかった。
 この会議では、大井川上流部の地下水がどのように流れていくかが議論になった。複数の委員が「上流部の地下水はほぼ、いったん表流水になる」との見解を示し「地下水がないと雨が降らない時、川に水が流れない」と渇水時の地下水の重要性を指摘する意見も出た。
 大井川直下付近の地下水がトンネル掘削時に山梨県側に流出すれば、下流側の表流水が減ることになる。地下水の分布を調べる電気探査という方法があるが、JRは実施しておらず、どのぐらいの量が大井川直下付近の地下にたまっているのかは分かっていない。
 国交省鉄道局の江口秀二技術審議官は会議後の記者会見で「慎重に掘削する」としたJRの見解を引用し「(見解に)書いてある通りだ」と述べたが、地下水が大量に存在する可能性については見解を示さず「(会議で)議論にならなかった」と繰り返した。
 JRは「大量湧水の可能性は小さい」と判断した根拠にボーリング調査の結果を挙げたが、大井川直下については直接、ボーリングして調べていない。調査の詳細結果を示した資料「柱状図」も非公表で、大量湧水の可能性が小さい根拠が明らかになったとは言い難い。県の担当者は、大井川直下部分のJRの調査は「不十分」だとの認識を示している。

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