静岡県と国交省トップ会談詳報 川勝知事/現場抜きの空論 藤田次官/条例運用変更を

 リニア中央新幹線のトンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、川勝平太知事と国土交通省の藤田耕三事務次官が10日、県庁で会談した。予定時間を大幅にオーバーし、互いに相手の発言を遮って議論する場面もあったが、一致点は見いだせなかった。主なやりとりは次の通り。

 ■国交省の提案
 藤田次官 大井川の水資源や南アルプスの自然環境の保全とリニアの早期開業の両立が基本認識。トンネルを掘る前の段階の工事を速やかに進めることが両立にかなうというのが今回の提案だ。なし崩し的に本体工事が進むという懸念への歯止めも条件にした。(工事を制限する)条例の運用を変え、水資源への影響が小さい範囲内で、坑口の整備を進められないか。
 川勝知事 合理的な提案ではあるが、流域10市町とは2年前の議論で、坑口の整備は本体工事と一体との共通理解がある。昨年の台風や今回の豪雨でヤードや作業道も被害を受けた。今月中に着工したいと言っても、水道の復旧にも数カ月かかる状態で誰が工事をするのか。作業員の安全を確保せず着工するのは本末転倒。現場を抜きにした空論だ。

 ■問題が解決しない場合のルート変更
 川勝知事 現行計画では、例えば南アルプスがだめになったり、水が枯渇したりしたら、結果的に(水資源への影響回避とリニア早期開業が)両立できない場合がある。県議会から開業予定に間に合わないのならルート変更もやむを得ないぐらいの交渉をすべきだと厳しく指弾された。
 藤田次官 ルートや技術的な観点を含めていろいろな議論や手続きを踏んできた。その上で今、有識者会議が水や自然環境の問題をどうするかと議論している。その結論を、予断を持たずに待とうということであり、ルート変更の議論をする段階では全くない。

 ■国交省専門家会議の全面公開
 川勝知事 専門家会議の議事録は匿名で、公開と言うのは詭弁(きべん)だ。国交省鉄道局長と交わした五つの約束の第1条で会議の全面公開を求めた。局長は「分かりました」と言ったが、ふたを開けるとできていない。会議を全面公開してほしい。
 藤田次官 メディアや関係者に見てもらい、議事録を公開することで、必要な透明性は確保されていると考える。知事と見解は違うかもしれないが。紙でのやりとりはあったが、言った言わないとなるのでやめよう。

 ■今後の対応 
 藤田次官 追加工事は既に行った宿舎の工事と同様の性格。条例上で同じ扱いができないか、実務的に解釈変更を検討してほしい。流域市町の不安は分かるが、今日の話も踏まえ意見を聞いてもらえないか。具体的な懸念を示してもらい、何とか一致点を探りたい。われわれが直接意見を聞くプロセスが必要では。
 川勝知事 条例に基づき、トンネルを掘るのに関わるものは活動拠点の整備と区別された本体工事だという結論が既に出ている。有識者会議の結果が出るまでは何もしないで待つのが筋。いったん信用を失った人が説明に来ても話は聞かない。

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