リニア「ヤード工事容認を」国交省提案に静岡県側憤り 流域市町も一様に否定的

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り9日、早期のリニア開業を目指してヤード(作業基地)の追加工事を認めるよう県に提案した国土交通省。だが、JR東海が2027年開業の延期を事実上、表明した後の対応だけに、県関係者は「認められないと分かった上での提案。静岡が悪者になるだけだ」と憤った。大井川の流域市町も同日、一様に否定的な受け止めを示した。
 川勝平太知事と流域10市町の首長らは先月、金子慎JR東海社長と知事のトップ会談に先立って意見交換し、国や県の有識者会議で結論が出る前の着工は時期尚早だと一致したばかり。このため、同省の提案について御前崎市の柳沢重夫市長は「流域住民の思いを本当に理解してくれているのか疑問を抱く」とコメントした。
 牧之原市の杉本基久雄市長も「(着工した後に)坑口変更が必要になった場合、工事費の増額は利用者負担額の増加につながる。既成事実をつくることになる」と非難。島田市の染谷絹代市長は「流域10市町の言い分はウェブ会議で知事に伝えてある」と答えた。
 県には、水問題の対策を議論する同省の専門家会議の対応を巡って不信感がある。同省は、県が事前の合意を踏まえて求めた会議の「全面公開」に応じず、川勝知事は同省幹部を強く批判。会議を傍聴できない県議からも不満の声が上がっている。ある県幹部は「『全面公開』の時のように今回の提案内容も解釈を変えてくるのでは」と警戒する。
 県有識者会議の専門部会開催に応じないJRを、同省鉄道局が強く指導しないことにも県側は不満を抱いている。県の担当者は「着工を求めるよりも、JRに働き掛ける方が先では」と同省の対応を疑問視した。

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