テーマ : 大井川とリニア

JR側に具体策なく…流域首長、厳しい目「切実さ分かっていない」 リニアトップ会談

 川勝平太知事とJR東海の金子慎社長の会談は26日、インターネット配信され、大井川流域の市町の首長や利水団体の関係者らが2人の発言を見守った。トップ会談の実現は評価しつつも、ヤード工事の了解を得ようとする金子社長と知事とのすれ違うやりとりに「具体策が示されず進展しなかった」「水問題の重要性は(JRに)伝わっていない」などと厳しい声が上がった。

トップ会談の映像に見入る松井三郎掛川市長(左)と市担当者ら=26日午後、掛川市役所
トップ会談の映像に見入る松井三郎掛川市長(左)と市担当者ら=26日午後、掛川市役所

 掛川市の松井三郎市長は「社長さんなりの水問題、環境問題への提案があるかと思っていたが、ひたすらヤード工事の同意のお願いだった」と不満げ。川根本町の鈴木敏夫町長は金子社長が述べた水問題への決意について「工事を間に合わせるための方便で、裏付けがあると思えない」と断じた。
 島田市の染谷絹代市長や牧之原市の杉本基久雄市長は「工事の遅れの原因はJR側のデータや調査不足にある」と指摘。「流域住民を安心させる材料はなかった」(杉本市長)、「核心を突く議論にならず残念。水問題では流域の思いをくみ取ってほしい」(染谷市長)と訴えた。
 御前崎市の柳沢重夫市長は会談を「前に進むためのステップ」としつつ「JRはしっかりしたデータ、資料を提供して環境を整えるべき」と強調。袋井市の原田英之市長は「JRは有識者会議の結論を待つべき。この面談を契機に話し合いを重ねて」と求めた。
 利水団体の関係者らも会談を視聴した。金谷土地改良区(島田市)の大石好昭理事長は「今の段階で結論が出ないのは当然。JRは利水者の声をもっと聞いてほしい」と話す。掛川市区長会連合会の服部克己会長は「JRはただ工事を認めてくれというスタンス。流域の切実な思いを伝えたい」とし、近く連合会でJR側に意見書を提出する考えを示した。

 ■「一日も早く解決を」沿線知事
 リニア中央新幹線工事に関する川勝平太静岡県知事と金子慎JR東海社長の会談が物別れに終わり、沿線県の知事らからは「一日も早く解決策を」(大村秀章愛知県知事)と、早期開業に向けた事態の打開を望む声が相次いだ。
 東京から大阪までの沿線9都府県でつくる建設促進期成同盟会の会長を務める大村氏は「引き続き粘り強く協議し、一日も早く、より良い解決策を見いだしてほしい」と要望。黒岩祐治神奈川県知事は「ぜひとも2027年の開業を目指し、尽力いただきたい」と求めた。
 工区が隣接する山梨県の長崎幸太郎知事は「静岡県が心配する課題が早期に解決されることを期待する」とのコメントを出した。
 阿部守一長野県知事は、静岡県とJR東海、国土交通省の3者に「今後とも十分な意思疎通を図ってほしい」と注文。古田肇岐阜県知事も「(3者で)速やかに、かつ円滑に調整が進むことを期待している」とした。
 中間駅が予定されている岐阜県中津川市の青山節児市長は「会談は大きな一歩。JR東海は早期開業に向けて最大限の努力を」と訴えた。
 名古屋以西で通過する予定の三重県の鈴木英敬知事は「われわれとしては早期開業をお願いしてきた。それに資する議論や取り組みを期待したい」と語った。

 ■自然保護団体「真摯に対処を」
 日本自然保護協会は26日、リニア中央新幹線で南アルプスを貫く静岡県内の工事を巡り、自然環境問題に真摯(しんし)に対処するようJR東海に求める声明を出した。
 工事が予定されている南アルプス地域は、自然と人間の共生を目指す生物圏保存地域「エコパーク」に登録されている。声明は、大井川の流量減少や、トンネル掘削で発生する土壌置き場周辺の環境問題に地元自治体が懸念を示していると指摘。着工には自治体の同意が不可欠だとしている。

いい茶0

大井川とリニアの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞