<リニア・トップ会談詳報>川勝知事/流域60万人の命の水 JR東海社長/なし崩し掘削しない

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、川勝平太知事とJR東海の金子慎社長が26日に静岡県庁で会談した。主なやりとりは次の通り。

会談後、取材に応じる川勝平太知事(右)とJR東海の金子慎社長=26日午後、県庁
会談後、取材に応じる川勝平太知事(右)とJR東海の金子慎社長=26日午後、県庁


 ■大井川の水問題に関する認識
 金子社長 知事と流域市町の会議で、大変厳しい意見が多かったと聞いている。水問題はおろそかにしない。なし崩し的にトンネル掘削を始めることはしないと約束する。有識者会議を軽んじるつもりもない。環境影響の回避について県と共通認識で進めていく。
 川勝知事 大変力強くて安心した。大井川の水は流域市町60万人の「命の水」だ。水問題について同じ思いを持っている。よほど注意してやっていかなければ。リニアも国策だが、ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)である南アルプスの環境を守るのも国策だ。両方をいかに両立させるか考えなければならない。

 ■ヤード(作業基地)工事の考え方
 金子社長 どこまでが準備工事で、どこまでが本体工事なのかを意味づけするのは難しい。トンネルを掘るか掘らないかで理解してもらいたい。ヤード工事は平面と土砂を入れるピットを造り、樹木をならして崩れないようにする作業。そこまではやらせてほしいと考えている。トンネルを掘ったりしない。国の有識者会議で方向性が出たら、素早く次のステップに行ける準備だけはしておきたい。
 川勝知事 その有識者会議は国土交通省の会議。一方で本県には水資源、生態系、地質を専門とする先生方がいて、代表の方が国交省の会議にも入っている。県の専門家会議に持ち帰ってきて、地元の方々に説明し、分かっていただくことが次のステップになる。国交省の会議が会議のエンドではない。

 ■27年開業が難しくなっている要因
 川勝知事 金子社長は静岡県が2027年開業の足を引っ張っているかのごとき発言を繰り返している。名古屋駅周辺では用地買収が難航しているとか、長野県では残土処分地の確保が難しいとか聞いている。あちこちで(問題が)起きているのに、なぜなのか。
 金子社長 地上の話は、まだ切羽詰まっていない。なぜ静岡(工区のトンネル工事)を急ぐかというと、最初に27年開業に向けた締め切りがくる切迫感からだ。静岡県のせいだと申し上げているのではない。一番長い工区に関わるので、事情をぜひ理解していただきたい。

 ■リニア建設の意義
 金子社長 リニアを造る一番の目的は、日本経済の大きな役割を果たしている東海道新幹線のバイパスを造ること。地震、降雨災害の抜本的対策になる。また、日本経済にインパクトを与え、国際競争力を強める。2027年の開業を目標に、責任感、期待感を背負っている。一企業の利害ではなく、沿線自治体と足並みをそろえてやっている。
 川勝知事 リニアに反対しているわけではない。だが、東京、名古屋、大阪を結んで、スーパーメガリージョンという世界屈指の大都市をつくる構想自体が、新型コロナウイルスの状況下では時代遅れ。今後のビジネスモデルがどうなるか。申し訳ないが、オンラインの方がリニアよりも速い。新しい時代に即応した形にしていかないといけない。

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