一般傍聴不可変わらず、静岡県議も対応問題視 リニア大井川水問題、国交省専門家会議

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する国土交通省の専門家会議で、県が求める「全面公開」が実現しない状況が続いている。オンライン形式で開かれた2日の第3回会合でも一般の傍聴は認められなかった。議論の行方を注視する県議も傍聴できず、会派を問わず国交省の対応を問題視する声が上がっている。

一部関係者に限って傍聴が認められた国土交通省専門家会議のオンライン映像。聞き取りづらい状況も改善されなかった=2日、県庁
一部関係者に限って傍聴が認められた国土交通省専門家会議のオンライン映像。聞き取りづらい状況も改善されなかった=2日、県庁

 国交省は今回も、県の求める会議動画のインターネット全国配信を認めず、一部の行政関係者や利水団体、報道関係者に配信先を限った。配信された映像は発言者名を表示するなど一部改善が見られたが、県庁で報道関係者が傍聴する別の配信映像はカメラがほぼ固定され、音声も不鮮明で聞き取れない部分があった。
 議事録は「速やかな開示」をうたっているが、初回と2回目が公開されたのは、それぞれ開催から10日以上たってから。発言した委員は匿名のままだ。
 会議の座長を務める福岡捷二中央大教授は会合後の記者会見で「地域が理解しないと何も動かない」と流域重視の姿勢を示しながらも、公開の在り方については「事務局に任せている」と国交省の対応を追認する。事務局の国交省鉄道局は「(匿名の)議事録を流域市町の人に読んで理解してもらえれば」(江口秀二技術審議官)と呼び掛けた。
 県議会は、県とJR東海の対話を促す決議案を可決したり、同社幹部を招いて集中審査したりしてきた。リニア水問題を所管する危機管理くらし環境委員会の四本康久委員長は「国交省会議の専門家の話は県議会の議論の参考になるはず。県民の代表がなぜ傍聴できないのか」と首をかしげる。
 別の県議は「専門家会議が委員名を伏せるのは、本県に対して厳しい結論を出そうとしているからでは」と不信感を募らせ「会議の結論を県議会で検証するためにも傍聴は必要だ」と訴える。

 <メモ>国土交通省専門家会議の「全面公開」を巡る問題 国交省と県は設置前の協議で「会議の全面公開」に合意したが、国交省は新型コロナウイルス感染症対策でオンライン形式に変えた会議の動画を一般の人がインターネットで見られないようにした。委員への非難や中傷の恐れが理由。報道関係者の取材と匿名議事録の開示で「全面公開の要件」は満たすと主張するが、県は不十分だとしている。

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