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リニア議論、入り口で停滞 静岡県側、国の中立性に疑念

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題で、国土交通省が主導する形で県とJR東海が議論する3者協議設置の調整がつまずいている。行司役を自任する国交省の中立性が担保されていないと県側は受け止めていて、議論の進め方を巡る県と国交省の溝が埋まらないためだ。川勝平太知事は、同省鉄道局中心の枠組みを変えない限り協議に応じない考えを示す一方、国交省側は「川勝知事の真意が分からない」と戸惑う。

会談後に取材に応じる(左から)難波喬司副知事、江口秀二国土交通省技術審議官、宇野護JR東海副社長=10月31日、国交省
会談後に取材に応じる(左から)難波喬司副知事、江口秀二国土交通省技術審議官、宇野護JR東海副社長=10月31日、国交省

 10月下旬まで調整は順調で、国交省、県、JRは3者の新協議体を設けることで一致。10月中に議論の進め方を明記した確認文書を交わす方向だった。
 状況が変わるきっかけとなったのは、地元合意の在り方に関する確認文書の文言調整だった。関係者の話を総合すると、国交省がJRの意向に沿って県に提示した文言の修正案を、県は地元合意を骨抜きにする案だと受け止めた。
 2014年に太田昭宏国交相(当時)はJRの環境影響評価書に対し「地元の理解と協力を得ることが不可欠」と意見を付けたが、その水準に達していない修正案だった。中立性を強調する国交省が、JRの意向をそのまま伝えてきたことも県が不信感を持つ一因になった。
 一方、国が地元合意を軽視したとする一部報道を受け、国交省は文言の調整段階なのに県が情報を意図的に報道機関に流したと捉え、水嶋智鉄道局長らが会談時に難波喬司副知事らを「静岡県は信頼できない」などと批判。このやりとりを伝え聞いた川勝知事は国交省への不信感をさらに強め、鉄道局が主導する協議に強く異議を唱える事態になった。
 流域市町の一部も国交省の中立性を疑問視。島田市の染谷絹代市長は6日に国交省幹部と面会した際「事業認可を出した側が公平とは言えないのではないか」と伝えたという。
 赤羽一嘉国交相は8日の記者会見で「関係する省庁や部局の知見を活用しながら、鉄道局でしっかり対応したい」と述べたが、混迷解消の糸口は見えない。10月に少なくとも2度会食するなど安倍晋三首相とJR東海の葛西敬之名誉会長の親しい関係も知られる。ある県関係者は「調整役の国がJRと近すぎるのでは」と懸念を示した。(2019年11月9日静岡新聞朝刊)

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