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湧水県外流出「対策を」 リニア水問題 県、JRへの意見公表

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川流量減少問題で、静岡県は31日、水資源や生態系への影響について科学的に議論してきた有識者や流域市町、利水団体から集約したJR東海への意見や質問を公表した。県の中間意見書に対するJRの回答案を踏まえて30日にJRに送付した内容。トンネル内から出る湧水の他県への流出に言及したJRの姿勢に、厳しい意見が目立った。

JR東海に対する主な質問や意見
JR東海に対する主な質問や意見

 JRは昨年10月に「トンネル湧水は全て大井川に戻す」と表明したが、回答案で「できるだけ早く先進抗(トンネル本体より先に掘る小さなトンネル)を山梨、長野両県とつなぐことで湧水が両県に流出する期間が短くなるようにする」と記し、県外への流出を前提にしている。
 県環境保全連絡会議の大石哲委員(神戸大教授)は「山梨、長野両県に流出することは納得できない」とし、流出する水量を明らかにして対策を講じるべきだと主張。利水関係者からは「流出が前提ではなく、流出しないための対策を説明してほしい。県境付近でも本来、大井川水系に流入する水は戻してもらう」とする意見が出された。
 また、中下流域で井戸枯れなどが起きた場合の補償の対応について、県側は中立的な第三者評価を受ける必要があると主張するが、JRは回答案で「適切に対応する」などとした。これに関し、丸井敦尚委員(産業技術総合研究所総括研究主幹)は「JRは自分たちの考査で済ませると回答している。最低でも県の機関に評価を依頼すべきだ」と指摘し、利水関係者は「リニア工事との因果関係の立証について評価体制や補償の対応が示されていない」とした。
 県は8月に数回、有識者とJRが個別に意見交換する場を公開で設ける。その内容を踏まえてJRは正式な回答をまとめる方針。(2019年8月1日静岡新聞朝刊)

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