南アルプス共生の頂 エコパーク1年① ライチョウ減に危機感

 日陰に雪の残る5月下旬の南アルプス茶臼岳。静岡ライチョウ研究会のメンバーが、ことしもニホンライチョウの個体数調査に入った。繁殖を前に雄、雌がペアをつくり、縄張りを形成する時期。ハイマツの茂みや岩場を観察し、環境省の個体識別番号を付けたペアや、足輪のないペアを確認した。標高2400メートル以上の過酷な環境下で、今月中旬には新しい命が生まれる。

茶臼岳で確認されたニホンライチョウのつがい=5月23日(静岡ライチョウ研究会提供)
茶臼岳で確認されたニホンライチョウのつがい=5月23日(静岡ライチョウ研究会提供)
【地図】南アルプスのライチョウ保護・調査区域
【地図】南アルプスのライチョウ保護・調査区域
茶臼岳で確認されたニホンライチョウのつがい=5月23日(静岡ライチョウ研究会提供)
【地図】南アルプスのライチョウ保護・調査区域

  氷河期の遺存種として高山帯の生態系を象徴する日本のライチョウは2012年、環境省レッドリストで絶滅危惧1B類に引き上げられ、本年度から環境省の保護・増殖計画が本格化する。特に減少が著しいとされる南アルプスの北岳周辺では、ふ化直後のひなを降雨量や気温による影響、捕食の危険から守るためのケージ内保護を初めて実施する。乗鞍岳では卵を採取して動物園で人工飼育する取り組みも控える。
  長年ライチョウの生息調査を続ける信州大の中村浩志名誉教授は「カラス、キツネなどひなを捕食する動物が高山帯に増えている」と指摘。南アでの生息数減少に危機感を抱き、「まずは死亡率の高いひなを守ることが大切」と訴える。
  昨年南アのユネスコエコパーク(生物圏保存地域)登録を実現させた静岡市、川根本町など3県の10市町村は、生態系保全のシンボルとしてロゴマークにライチョウを採用した。ただ、「静岡市にライチョウの生息地があることは都市部の人にほとんど知られていない」(田嶋太同市環境創造課エコパーク推進担当課長)。
  市は10月に市内で開催される「ライチョウ会議」に合わせ、シンポジウムなどを通じて一般市民に分かりやすく南アの生態系の魅力を伝える予定だ。葵区井川地域のビジターセンターの展示内容も充実させる方針。子ども向けの環境学習事業も計画する。
  静岡ライチョウ研究会の調査では、世界の生息南限とされるイザルガ岳(静岡・長野県境)で11年以降、個体を確認できない状況が続く。「南アは未調査地域も多いのが現状。研究者だけでなく若い世代にも関心を持ってもらうことが大切」と朝倉俊治会長は言葉に力を込める。

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 南アルプスのユネスコエコパーク登録から12日で1年。貴重な自然を守り、活用する取り組みは始まったばかり。模索が続く登録地域の現状や課題を伝える。

  <メモ>ニホンライチョウ 北半球に広く分布するライチョウの中でも最南端に隔離分布する。国指定の特別天然記念物。南北アルプスなど本州中部の高山帯が生息域とされる。成熟個体で全長約37センチ、羽は夏に雄が黒、雌が茶色のまだら模様。冬は全身白色になる。1980年代に生息数約3000羽とされたが、2000年代には2000羽弱に減少したと推定される。
(2015年6月6日静岡新聞朝刊)

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