南アルプス共生の頂 エコパーク登録(上)リニア工事の影響

 「餌とする(落葉広葉樹の)ドロノキが伐採されれば、オオイチモンジの生育環境は傷ついてしまう」

発生土(残土)置き場候補地の燕沢。地元は生態系への影響を懸念する=6日午後、静岡市葵区
発生土(残土)置き場候補地の燕沢。地元は生態系への影響を懸念する=6日午後、静岡市葵区

  今月6日、JR東海リニア中央新幹線のトンネル工事が計画されている静岡市最北部の南アルプス。発生土(残土)置き場の候補地、燕(つばくろ)沢を訪れた市職員は希少なチョウへの影響を心配した。
  国連教育科学文化機関(ユネスコ)が12日に決定した南アルプスのエコパーク(生物圏保存地域)登録。本県の財産が、富士山に続きまた一つ世界に認められた。ただ、「環境保全と利活用の両立」を図るエコパークの意義が将来にわたって保てるか、リニア工事を念頭に不安視する声は少なくない。
  その象徴が三つのゾーニングのうち「移行地域」をめぐるJR側と地元行政、関係団体側との見解の相違だ。ユネスコが、非常口(斜坑)や残土置き場が設置される移行地域を「経済発展が図られる地域」と定義していることから、JRは工事の正当性を主張する。対する地元サイドは「あくまで自然環境の保全を最優先にした開発行為を」と求め、平行線をたどる。
  「あらゆる予測を立てても完全な対策には至らない」。県中央新幹線環境保全連絡会議の和田秀樹会長(静岡大名誉教授)は危機感を募らせる。JRは環境影響の回避、低減を図るため単独でモニタリングを行う方針だが、南アルプスの自然は未解明な点が多い。リニア計画実施には、謙虚な態度と関係機関との連携が必要との指摘だ。
  ユネスコは10年ごとに保全状況報告を求めている。審査によって登録が取り消される可能性があるといい、エコパーク登録に尽力した増沢武弘静岡大特任教授も「互いに認識を擦り合わせることが大切」と強調する。
  保全への一体的な態勢に向けては、行政側の結束も欠かせない。静岡市は5月、JRによるさらなる対策構築につながるよう「国に働き掛けるのはどうか」と県に持ち掛けたが結局、結論の一致に至らなかった。
  リニア工事による環境負荷を懸念する市民団体の男性は、長野県知事が同様の趣旨で関係市町村長とともに環境省に要望した経緯を挙げ、「法的に効力を持たなくても、やれることはやってほしい。まずは県と市がかみ合わなければ」と訴える。
  静岡市はJRとは別に、独自に環境調査に乗り出した。データと環境変化の見通しを関係者間でいかに共有できるかが問われる。
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 南アルプスのユネスコエコパーク登録が決まった。生態系と人間社会の共生を図るエコパークの理念を継承していけるのか。保全、啓発、利活用―。それぞれの課題や動きを探った。

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  <メモ>エコパークのゾーニング エコパークは法に基づき厳格に保護する「核心地域」、核心地域に隣接しエコツーリズムなどに活用する「緩衝地域」、さらにその周辺に位置し経済活動などを可能とする「移行地域」の三つのゾーンで構成する。県内の登録面積は約9万8400ヘクタール。このうち移行地域は約8万6100ヘクタールを占め、一部でリニア建設が計画されている。
(2014年6月13日朝刊)

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