500避難所、浸水リスク 静岡県内「1000年に1度」大雨時
(2020/10/8 08:31)-
想定しうる最大規模の大雨で浸水する区域に風水害の指定避難所がある自治体は静岡県内35市町中で27市町あり、該当する避難所数は計500カ所以上になることが、7日までの静岡新聞社の取材で分かった。静岡県東部を中心に甚大な被害が発生した2019年の台風19号上陸から12日で1年。各市町は指定見直しなどの対策を進めるが、依然として多数の避難所に浸水リスクがあることが浮き彫りになった。
避難所は切迫した災害から逃れるための指定緊急避難場所を兼ねている所も多い。災害対策基本法は避難所や緊急避難場所の立地について、災害の影響が少ない場所などと定め、浸水域に設けることを規制していない。ただ、建物の上階に垂直避難できる体制を取るなどの対応が急務になっている。
国土交通省は2015年の改正水防法に基づき、千年に1度レベルの降雨による想定浸水域を河川ごとに示した。県内でこの区域に避難所が立地するのは静岡、浜松、沼津など27市町。静岡市は指定避難所241カ所のうち、6割強の146カ所が安倍川流域などで浸水区域に入る。
同市や浜松市は、浸水域の避難所や緊急避難場所はそのまま使用する方針。静岡市は「浸水域に住む市民は30万人以上。浸水域外に避難させるのは現実的でない」と強調する。浜松市も「想定浸水区域にあっても実際に被災するかは分からない。開設の有無は災害の状況に応じて判断する」と述べる。
一方、下田市は本年度、浸水域に立地する避難所の指定を全て外し、浸水域の外に避難誘導する。ただ、地震発生時の避難所としては引き続き指定していて、市の担当者は「住民には分かりづらいかもしれないが、啓発に努め理解を促したい」と語る。
静岡大防災総合センター客員教授で、東京大大学院特任教授の片田敏孝氏(災害情報学)は「法改正で浸水域が広域になり、そこに避難所が立地している現状がある。感染症対策も浮上する中、行政は分散避難など避難の考え方を改めてもらえるよう日頃から啓発してほしい」と求める。
<メモ>避難所と緊急避難場所 避難所は災害後、被災した人などが生活を送る場所。緊急避難場所は洪水や津波、大雨時などに危険を避けるため一時的に身を寄せる場所。重なって指定される所も多いが、東日本大震災の際に位置付けがあいまいだったため、被害拡大の一因になった。2013年の法改正で明確に区分した。
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