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富士川漁協、濁り「究明せず」 日軽金からは多額補償金

(2019/6/24 17:21)
静岡新聞社が独自入手した富士川漁協の内部資料。日本軽金属の補償金額の高さは群を抜く(画像の一部を加工しています)
静岡新聞社が独自入手した富士川漁協の内部資料。日本軽金属の補償金額の高さは群を抜く(画像の一部を加工しています)
富士川漁協が富士川本流で漁業権を持つエリア
富士川漁協が富士川本流で漁業権を持つエリア

 駿河湾ではサクラエビ不漁との関係も指摘される富士川水系の強い濁り。一方、実態調査が進む早川(山梨県早川町)の本流・富士川中流域では、濁り問題への受け止めは異なる。えん堤がアユの遡上(そじょう)を阻んでいるとして日本軽金属(東京都)から多額の補償金を受け取る富士川漁協(山梨県身延町)は、強い濁りの存在は認めながらも原因究明に動こうとしていない。こうした現状には首をひねる専門家もいる。
 静岡新聞社が23日までに独自に入手した同漁協の内部資料によると、同漁協は早川水系でほとんどが土砂で埋まる雨畑ダムを運用する日軽金から、年間約1500万円の補償金を受け取っている。
 静岡、山梨両県が5月に計3回実施した合同水質調査では、雨畑ダムで濁り具合の指標となる浮遊物質量(SS)が1リットル当たり1600ミリグラム(28日)と極めて高い値を示した。静岡県水産資源課の担当者は「1週間前の大雨を踏まえても説明しにくい」と述べるなど県内では「原因の一つは雨畑ダム」との認識が広がりつつある。
 一方、富士川漁協の望月啓自組合長は「早川が濁っているのは事実」とし、アユなどへの影響も否定しない。ただ、濁りが出ている原因については「特定できない」としつつも「雨畑ダムの他にもリニア工事や砂利採取、自然の濁りもある」とし「今後も調査の予定はない」との立場を貫く。
 一方、富士川中流域の20程度の事業所などが数万~数十万円程度の補償金を支払う中、日軽金の補償金は飛び抜けて高い。2012年度から現在の金額になったが、それまでは400万円程度。同社との補償金増額交渉に当たった前組合長の男性(84)=山梨県身延町=は「下流の2カ所のえん堤で魚が遡上(そじょう)しにくくなっていることへの補償。濁りとは一切関係ない」と説明する。
 日軽金蒲原製造所(静岡市清水区蒲原)の大沢一之総務課長は23日までの取材に「相手方(富士川漁協)もいるので回答は控える」と補償や4倍近い増額の理由を明らかにしていない。
 大沢課長は雨畑ダムから早川を経て富士川本流に濁った水が流れていることにも「発電目的で取水利用している。水質については分かりかねる」と述べ、濁り自体への認識がないとの立場。「富士川漁協からダムの水質検査の要望はない」とも語った。

 ■日本軽金属および富士川漁協と静岡新聞記者のやりとり
 記者「雨畑ダムから早川を経て富士川に濁った水が出ている認識はあるか」
 日軽金・大沢一之課長「発電目的で取水利用している。水質については分かりかねる」
 記者「雨畑ダムの水質検査はしているか」
 日軽金・大沢課長「していない。富士川漁協からも要望はない」
 記者「富士川漁協への補償と増額の理由は」
 日軽金・大沢課長「相手方もいるので回答は差し控える」
 記者「早川、富士川中流の濁りをどう考えるか」
 富士川漁協・望月啓自組合長「原因は雨畑ダムだけではない。原因は特定できないし、究明のための調査の予定はない」
 記者「補償はどういう意味か」
 富士川漁協・前組合長「えん堤で魚が遡上(そじょう)しにくくなっていることへの補償。濁りは関係ない」

 ■漁協の姿勢、不自然
 全国でダムの漁業補償問題などに長年携わってきた明治学院大の熊本一規名誉教授(漁業法)の話
 濁りによる漁獲減少は漁業権の侵害行為であり、漁民の理解が必要だ。また、漁業権の免許を受けた漁協には漁場管理を行う義務がある。富士川の濁りの真相を突き止めようとしない漁業者の姿勢には首をひねらざるを得ない。周囲から「アユの不漁は濁りが主因である」と指摘されているのにもかかわらず、地元漁協も企業もあえてそれに触れない状態とも言え、不自然にも映る。

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