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年1億トンは「影響小」か/中間報告、客観的事実を 国交省専門家会議・第12回議事概要【大井川とリニア】

 国土交通省は13日までに、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を議論する専門家会議第12回会合(9月26日)の議事録を公表した。同省が作った中間報告案について意見交換し、オブザーバーの難波喬司副知事も発言した。静岡新聞社は匿名の議事録と傍聴取材を元に発言内容をチェックし、実名化して概要をまとめた。

国土交通省の第12回専門家会議での発言(ポイント)
国土交通省の第12回専門家会議での発言(ポイント)


 【予測と現実の違い】
 森下祐一静岡大客員教授「(流量予測について)シミュレーションはあくまでも計算なので、実際の現実と違うということを書き込んでおく必要がある」
 徳永朋祥東京大教授「20年後か何年後か知らないけれども、この計算では、ある時期がたつと、降雨と(地質の)透水性、トンネル位置との関係によって、新しい地下水の定常的な状況になる」
 丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員「現状ではほとんど文献値によるデータしかない。先進長尺ボーリングで新しいデータがどんどん取れてくる。更新されたデータを盛り込むことで科学的、工学的に精緻な報告や検証証明ができる」
 西村和夫東京都立大理事「ボーリングなどの地下水位のデータがある程度確保できないと(地質推定の)精度は極めて悪くなる。ただ、あそこは山だから、モニタリング(継続的な計測)が難しい」

 【中下流域の地下水量への影響】
 森下氏「中間報告案の主なポイントに、中下流域の地下水への影響は『河川流量の年変動値の範囲内で、小さい』とある。河川流量の変動値はかなり大きい。比較対象が大き過ぎて適切ではない」
 沖大幹東京大教授「(島田市神座より上流側の)地下水流去量がゼロから年1億トンと推計されるという話に相当する。気持ちの問題として、小さいという言い方に抵抗感があるのはよく分かる」
 森下氏「小さい、大きいは主観の問題がかなりある」
 大東憲二大同大教授「山体に含まれていた地下水は工事前の状態に戻らない。新しいバランスができるまでにかかる時間は20年か30年か、100年か千年かは分からない」

 【中間報告の在り方】
 森下氏「(中間報告案は)中下流域の水は大丈夫だというところに特化し過ぎているので、もう少し客観的に事実を書き込んでもらうことが重要だ」
 沖氏「『水は大丈夫だと書いてある』と言ったが、そのような文言はたぶん書いていない。大丈夫かどうかは、いろいろなリスクがある中で誰が判断するか難しい。把握して分かっているリスクと、今は誰も気付いていないリスクがある」
 難波喬司副知事「最高レベルの専門家がJRに指導し、県が求めても出てこなかった資料が出て、非常に分かりやすい説明になってきた。ただ、全て疑問が解消したわけではない。JR資料はまだ信頼を欠くと懸念されるところがある」
 福岡捷二中央大教授「重たい修正事項もあるが、前向きな議論なので、できるだけしっかりと修正したい。次回会議で取りまとめの仕上げをしたい」
 (政治部・大橋弘典)

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