テーマ : 熱海土石流災害

土石流被災のそば店 再開で恩返し 無傷、先代の「かえし」力に

 熱海市伊豆山で7月に発生した大規模土石流で被災し、5カ月以上もの間休業していた国道135号沿いの老舗そば店「木むら」が22日に営業を再開する。母と店を切り盛りする小林和海さん(48)は「応援してくれたお客さんとボランティアの皆さんに恩返ししたい」と話している。

22日の営業再開に向けて準備を進める小林和海さん
22日の営業再開に向けて準備を進める小林和海さん
地下室に流入した大量の泥から被害を免れた「かえし」のかめ=10日、熱海市伊豆山
地下室に流入した大量の泥から被害を免れた「かえし」のかめ=10日、熱海市伊豆山
22日の営業再開に向けて準備を進める小林和海さん
地下室に流入した大量の泥から被害を免れた「かえし」のかめ=10日、熱海市伊豆山

 同店は1935年に小林さんの祖父木村石蔵さん(故人)が創業した。土石流が発生した7月3日午前、小林さんは店で仕込みの準備をしていた。しかし、そば粉の配達が遅れていたため、いったん帰宅した。
 すると、正午すぎに店に残っていた母末子さん(78)から慌てた様子で「店の中に泥が入ってきた」と電話がかかってきた。食材やそば打ち機などがある地下室には、車のバンパーや大木までが流れ込んできたという。
 目標にしていた創業100年まであと14年。あまりの光景に「閉店も考えた」と言う小林さん。しかし、自家製の「かえし(そばつゆの基礎となる調味料)」を入れるかめが無傷で残っていたのを見て思いとどまった。「先代の父から受け継いだ物。店を続けなさいと言われている気がした」
 常連客や住民から励まされ、猛暑の中で大勢の災害ボランティアも支援に駆けつけた。懸命に泥出しや壁の消毒などに当たってくれたボランティアと接することで、前向きな気持ちになれたという。
 あれから5カ月以上がたち、地域は復興を目指して少しずつ歩み出している。「生まれ育った伊豆山で営業を続けられる喜びを感じている」。小林さんはそう話し、営業再開の準備を進めた。

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