高柳克弘さん 言葉のはかなさ思う【創る その時、その心ー2021年しずおか連詩の会㊦】

 「連詩の会」に初めて参加した2016年は、野村喜和夫さんら3人の詩人の皆さまと俳人の私が、ともに言葉を紡ぎました。俳句と自由詩の違いだけでなく、言葉の本質やはかなさを深く考えました。この経験は今も創作に生きています。

高柳克弘さん
高柳克弘さん

 冒頭で暁方ミセイさんが駿河湾やそこから上る太陽をイメージさせる詩を書かれ、続いて、ウナギやサクラエビなども登場。そろそろ調子を変えようかという場面で紡いだ第10編は、せっかく俳人も参加しているということで連句でいうところの「恋の座」です。高貝弘也さんが紡がれた第9編の兄妹のイメージを恋愛関係が始まった男女に置き換え、3句の俳句にしました。
 犬ふぐり、すみれぐさ、ヒヤシンスはそれぞれ春の花で、季語。実際は11月だったのですが、男女の足元や背景にある季節の草花を通して恋の場面を作り出しました。大学のベンチでベーグルを分け合う初々しいカップルが、互いの家を行き来する段階まで進み、最後に恋が終わるところまでを表現しました。
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 第27編では、言葉とはなんだろうという本質的な問いがテーマになっています。参加者の皆さまと行った食堂のアンケート用紙に書きました。言葉はすぐ消えてしまう、はかないもの。消えてしまうから残っていく。消えても、ふとした時によみがえるものではないか、そんな思いが込められています。海鮮丼に入っていたシソやお札など詩的ではない言葉を取り入れ、あえて“異物感”を与えました。これが俳人のアイデンティティーです。
 最後に1句添えました。「言葉の書かれた紙が火事の中にあって1度は燃え尽きてしまっても、言葉自体は鳥のように羽ばたいて別の紙を見つけて、死なないのではないか」という意味。激動の時代の中で、詩の言葉の価値を押しつぶそうとする現実の重みを象徴するのが火事。ちなみに火事は近代以降、冬の季語になりました。
 詩人と俳人が集まって言葉を紡いだことを長い目で見て意味のあることにしなくてはいけない。連詩の会はぜいたくな時間でした。
 (この連載は文化生活部・橋爪充、遠藤竜哉が担当しました)

 ベーグルを分け合ふ仲に犬ふぐり 
 すみれぐさ終電までを居てくれて
 ヒヤシンスソファのスペースつい空けぬ
 (2016年しずおか連詩の会 「風の千層」の巻 第10編)

 食堂のアンケート用紙の裏にこの詞書を書いています
 詩はどこにでも書けます シソの葉 砂の上
 お札(さつ)にはやめておこうかな そして
 詩は焼けても 詩は消えません ね 野村さん
 ことの葉はみなはばたくや火事の中
 (同第27編)

 たかやなぎ・かつひろ 1980年、浜松市生まれ。読売新聞朝刊KODOMO選者、俳句結社「鷹」編集長。句集に『未踏』(第一回田中裕明賞)、『寒林』。近刊に評論集『究極の俳句』、児童文学『そらのことばが降ってくる 保健室の俳句会』。

 9~11日 浜松で創作
 2021年の「しずおか連詩の会」(県文化財団など主催、静岡新聞社・静岡放送共催)は9~11日に浜松市内で創作を行う。参加者は野村喜和夫さん(詩人)、四元康祐さん(詩人)、東直子さん(歌人、作家)、高柳克弘さん(俳人)、水沢なおさん(詩人)。発表会は12日午後2時からアクトシティ浜松音楽工房ホール(同市中区)で。入場料は1000円。問い合わせはグランシップ<電054(289)9000>へ。

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