熱海土石流「殺人」告訴受理 未必の故意捜査へ

 熱海市伊豆山で7月に発生した大規模土石流で、熱海署は6日、起点となった盛り土を含む土地の現旧所有者に対する殺人容疑の告訴状を受理した。県警は既に、現旧所有者を業務上過失致死容疑などで捜査している。現旧所有者が土石流の危険を予見し、遺族側が主張している「住民が死亡しても構わない」との未必の故意が立証できるかが、捜査の焦点になりそうだ。

土地の現旧所有者を殺人容疑で告訴した遺族ら=熱海市
土地の現旧所有者を殺人容疑で告訴した遺族ら=熱海市

 告訴されたのは、盛り土を造成し、2011年まで土地を所有していた神奈川県小田原市の不動産管理会社の元代表(71)と、現在の土地所有者の男性(85)。告訴人には死者6人の遺族5人が名を連ねている。
 娘(44)を亡くした小磯洋子さん(71)は「発生から5カ月間、涙を流さなかった日はない。娘の未来、孫が母親と一緒に暮らせたはずの未来を返してほしい」と訴えた。
 告訴状によると、元代表は法令違反を繰り返し、熱海市から少なくとも7度の行政指導を受けたにもかかわらず、無視して土砂を搬入し続け、当初計画の高さ15メートルを大幅に上回る約50メートルの盛り土を造成したとされる。現所有者は盛り土が危険な状態と知りながら、排水設備などの安全対策工事をせずに放置したとしている。
 遺族側弁護団の加藤博太郎弁護士は「極めて悪質な行為であると警察も認めた。単なる過失ではなく、大量殺人に匹敵する行為。厳重な処罰を望む」と述べた。
 県警は8月、母親を亡くした瀬下雄史さん(53)=千葉県=の告訴状を受理し、10月に現旧所有者の強制捜査に乗り出した。土石流では26人が死亡し、1人が行方不明になっている。遺族、被災者計70人は現旧所有者らに約32億円の損害賠償を求める民事訴訟も起こしている。
 

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