沼津の魅力 再認識し発信を “よそ者”の存在が貴重【湧水】

 沼津市の市街地などを流れる狩野川。川沿いでは、平日の早朝はジョギングや犬の散歩、昼は休息する勤め人が多く見られ、週末には、ボートの練習のほか、自粛していたイベントが再開しつつある。20日は狩野川花火大会の代替イベントが開かれ、2年ぶりの“復活”に多くの市民が歓声を上げた。狩野川は市民にとって癒やしの場となっているのを改めて感じた。
 市内には無限の魅力がある。見上げると富士山がそびえ、南には駿河湾、隣接する伊豆半島と箱根西麓には雄大な自然が残る。山と海、有数の観光地など日本一と表現できる素材がいくつも存在する。これらの恵まれた環境は地域を売り込む際の大きな武器とも言える。
 では、この武器を生かし切れているだろうか。歯止めがかからない中心街の衰退や人口減は新型コロナ禍で加速している。地元経済人からはさえない景況感を嘆く声が聞かれる。
 個性的な地元の人を招き、ポッドキャストラジオで沼津の魅力などを配信している「沼津未来クリエイティブ」会長の原清人さん(54)は沼津の良さを再発見する取り組みを仕事仲間らと重ねている。仕事で長く古里を離れていた原さんによると、外から見ると改めて沼津の魅力を実感するという。「この環境を当たり前と思い、恵まれていると感じていないのでは」と問題提起する。県外出身の身としても同感だ。
 地域おこし協力隊として活動した後、同市戸田に移住し、地元特産の深海魚で活性化を目指す青山沙織さん(39)=兵庫県尼崎市出身=も「地元の人たちは良さに気付いていない」と言う。ただ、青山さんの地道な活動と「まちを元気にしたい」との思いが、徐々に地元住民を動かしつつある。売れる素材と考えてこなかった海の幸を全国に発送し、引き合いは増している。
 こうした“よそ者”の存在が貴重で、受け入れる度量が必要だ。

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