東直子さん 音楽や絵のように【創る その時、その心ー2021年しずおか連詩の会㊥】

 「連詩の会」への参加は2回目。前回の2014年は野村喜和夫さんのほか、音楽に造詣の深い覚和歌子さん、木下弦二さん、そして画家でもある大岡亜紀さん。多様な才能に大きな刺激を受けました。

東直子さん
東直子さん

 冒頭で覚さんが「光の館」のイメージを提示され、大岡さんが抽象的にその感覚を表現されました。木下さんがわりと具体的な町の営みとして表現すると、野村さんが「死」を思わせる「骸[むくろ]」などの言葉を紡がれました。そこから第5編の私は静岡県の富士山、富士山麓の青木ケ原樹海と連想し、光と好対照な少しダークな感覚を込めました。
 樹海は人の手が入らないまま木々が海のように広がる、命が誕生する場所でもあります。子どもの指、そして木々の芽吹きを象徴するのが「ちいさなゆび」です。
 実際に詩作当日は天気が良く、きっと海も輝いていたことでしょう。「こんなにお天気がよすぎて」は中原中也の詩「別離」へのオマージュです。「こんなに良いお天気の日にお別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛[つら]い」というフレーズがあるのです。
                   ◇
 大トリの第40編は全てのイメージを統合するプレッシャーがありました。感覚を研ぎ澄ませていた詩作が終わりに近づき、収束するイメージを「音が止[や]み、布がひるがえる」という、お芝居の終わりを思わせる言葉に込めました。布は舞台転換などに使われますね。何かを仕切り、新たな解放へ向かう感覚です。
 次の二行は、詩作の合間に訪れた三島大社の清らかな水と飼われていたシカの瞳をイメージし、神様の瞳から水をくみ上げて私たちは言葉を選んだんだという詩作全体を表現したものです。それぞれがくんだもので言葉を紡ぎ、読み手にもそれぞれ受け止め、広げてほしいという気持ちを込めました。
 実は詩作の裏で、覚さんと木下さんが詩の一部を使って作曲をし、大岡さんと私が詩からイメージを広げた絵画制作をしていました。詩作の中での音楽としての言葉の生かし方、絵画のような視覚的なイメージの膨らませ方は印象深く、良い経験となりました。

 樹海にうかぶちいさなゆびが
 あれをとってきて、と言います
 とりにいきたいとおもいます
 こんなにお天気がよすぎて
 こんなに海がふかくて
 (2014年しずおか連詩の会 「光の館」の巻 第5編)

 音が止み、布がひるがえる
 神様の瞳から汲み上げたうつくしい水を
 それぞれのてのひらでうけとめる
 (同第40編)


 ■12月9~11日 浜松で創作
 2021年の「しずおか連詩の会」(県文化財団など主催、静岡新聞社・静岡放送共催)は12月9~11日に浜松市内で創作を行う。参加者は野村喜和夫さん(詩人)、四元康祐さん(詩人)、東直子さん(歌人、作家)、高柳克弘さん(俳人)、水沢なおさん(詩人)。発表会は12日午後2時からアクトシティ浜松音楽工房ホール(同市中区)で。入場料は1000円。問い合わせはグランシップ<電054(289)9000>へ。

 ひがし・なおこ 歌人、作家。広島県生まれ。第7回歌壇賞、第31回坪田譲治文学賞受賞(『いとの森の家』)受賞。歌集『春原さんのリコーダー』『青卵』、小説『階段にパレット』、エッセー集『愛のうた』、入門書『短歌の詰め合わせ』など。

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