山梨・雨畑ダム下流 底生生物激減か 民間研究者、昨年調査

 駿河湾産サクラエビの不漁をきっかけに注目されている富士川水系の河川環境で、雨畑ダム下流の雨畑川や、同川が流入する早川下流(いずれも山梨県早川町)で底生生物(水生昆虫類)の数が激減しているとみられることが、同県の民間研究者の調査で27日までに明らかになった。底生生物はアユと並び河川環境の良しあしを示す指標とされ、研究者は近年の環境の変化に警鐘を鳴らしている。

雨畑ダムから2キロほど下流の雨畑川で採取した底生生物のサンプル(左二つが1994年、右一つが2020年)
雨畑ダムから2キロほど下流の雨畑川で採取した底生生物のサンプル(左二つが1994年、右一つが2020年)
篠田授樹さん
篠田授樹さん
雨畑ダムから2キロほど下流の雨畑川で採取した底生生物のサンプル(左二つが1994年、右一つが2020年)
篠田授樹さん


 地域自然財産研究所の篠田授樹さん(55)=山梨県都留市=が1994年と2020年にほぼ同一箇所の29地点で、25センチ四方の枠を河床などに置き、枠内にいる底生生物の調査を行った結果を比較して判明した。
 篠田さんが集めたサンプルの比較では、雨畑ダムから2キロほど下流の雨畑川と、富士川本流との合流地点から3キロほど上流の早川で1994年にはそれぞれ1平方メートル当たりに換算し、千個体以上がいたコカゲロウやユスリカの仲間の幼虫が、2020年にはほぼみられなくなった。
 ダムから2キロほど下流の雨畑川の調査ポイントは、19年まで約10年間、採石業者による高分子凝集剤入り汚泥(ポリマー汚泥)の不法投棄が続いた場所の約200メートル下流。篠田さんは底生生物の激減について「原因は不明だが普通ではない」と話していて、ダム由来の濁りや日本軽金属の自家発電用水力発電施設の取水による水枯れが原因の可能性もあると指摘する。
 一方で、篠田さんの調査では、雨畑ダムの10キロほど上流では、底生生物の数にはほとんど変化はみられなかった。近年、大規模な土砂崩れの発生が伝えられる雨畑ダム上流だが、篠田さんは「ダムより上の雨畑川の自然は依然豊かだ」と話し、「自然の濁りは数日でとれる。底生生物を元に戻すには河川での工事など人の振る舞いを変える必要がある」と訴える。
 昨年、29地点で実施した調査で得たサンプルについて、底生生物の種類ごとの生息数なども分析する予定。
 
 ■通称「カワムシ」生息状況 国、支流は調査せず
 国土交通省はおおむね5年ごとに行う「河川水辺の国勢調査」で、早川と富士川の合流地点から下流の富士川本流3地点で釣り人が「カワムシ」と呼ぶ底生生物の生息状況の調査をしている。ただ、支流では未実施だ。篠田授樹さんの調査データは学術的にも貴重とみられる。
 取材班が同省関東地方整備局に情報公開請求して得た、2015年に委託先のコンサル会社が実施した最新の調査結果では、前回実施の10年と比較したうえで「富士川水系における底生動物相には大きな変化は生じていないものと考えられる」と結論付けている。
 一方、篠田さんのデータからは、雨畑ダムの堆砂やポリマー汚泥の不法投棄などで変貌が伝えられる同じ富士川水系の雨畑川や早川の河川環境の変化がうかがい知れる結果となった。

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