友に会いたい 旧日清紡浜松工場の女性工員高校 初の同窓会計画

 現在は商業施設が建つ浜松市浜北区の日清紡績浜松工場の敷地内にかつて、女性工員が学ぶ高校があった。「松栄高等学院」という同工場付属学園。1967年から4年間学んだ土橋美枝子さん(69)=旧姓・榊原、同市北区=はいま、学年を超えた同窓会を開こうとしている。単一学年の会は開いたが、複数学年は開催経験がない。友の願いを受けての計画で、自身も「先輩たちにもう一度お目にかかりたい」と思いを募らせる。

「松栄高等学院」の卒業アルバムを眺める土橋美枝子さん。「働きながらでも、高校生活を送れて幸せだった」=11月上旬、浜松市北区
「松栄高等学院」の卒業アルバムを眺める土橋美枝子さん。「働きながらでも、高校生活を送れて幸せだった」=11月上旬、浜松市北区
松栄高等学院の校舎。現在は商業施設の敷地になっている(同学院の卒業アルバムより)
松栄高等学院の校舎。現在は商業施設の敷地になっている(同学院の卒業アルバムより)
「松栄高等学院」の卒業アルバムを眺める土橋美枝子さん。「働きながらでも、高校生活を送れて幸せだった」=11月上旬、浜松市北区
松栄高等学院の校舎。現在は商業施設の敷地になっている(同学院の卒業アルバムより)


 土橋さんは中学時代、高校で学ぶことを望んだが、金銭的な事情で進学させるのをためらう両親の会話を聞いて断念しかけた。教師から働きながら学べる場として日清紡の話を聞き、入社。糸の塊を作る仕上げの工程に配属された。2交代制で午前シフトの週は夕方、午後シフトの週は午前中に授業を受けた。「朝の4時過ぎに起きて仕事をし、夕方の授業で先生の話を聞くのは眠くて仕方なかった」と苦笑する。
 同学園はテニスやバスケットボールなど運動系から華道や読書といった文化系まで部活動があり、土橋さんは演劇部。「先輩と稽古の合間に冗談を言い合い、舞台で流す音楽のLPレコードを一緒に探した」と振り返る。
 同期は東北地方の出身者も多かった。同窓会は県内だけでなく青森県でも開いた。今年7月、同窓の1人から「結婚式を挙げたときに贈り物をくれた先輩に恩返ししたい」と相談された。彼女は礼などができないまま年を重ね「残された時間は少ない」と嘆く。同窓会幹事を何度も務めた土橋さんは、同窓生約70人の名簿を精査し学年が上の卒業生とも連絡が取れないか探る。「働きながらでも過ごせた高校生活は一生の思い出。先輩とも思いを分かち合えたら」と願う。

 〈メモ〉女性工員の学び場 日清紡ホールディングスによると、日清紡では戦前から、工場で働く女性従業員の教育のために付属学園を設けていた。富山工場の付属学園で1963年、高校卒業資格が得られる通信教育制度を導入。64年には浜松など全12工場に制度を広げた。ピーク時には全工場で約1200人が卒業した付属学園は、浜松が98年3月に閉校し、99年には学園制度そのものが終了した。
 女性工員らの学び場はほかにも「昼間定時制」の高校として県内に複数存在した。県教委によると、2008年度末で同制度が閉課程になった新居高にも周辺の紡績工場の女性工員らが通った。現在はこうした学校はなくなり、一部の単位制の定時制高校が昼も授業を行うのみだという。

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