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特集 : 大井川とリニア

果たす役割 まとめ巡り混乱を露呈 【大井川とリニア第6章 検証・国交省専門家会議㊦】

 「議論を取りまとめた上で地元に行って、現地を見ながら(流域と)意見交換する場を作っていただきたい」

国土交通省が主催する専門家会議設置の位置付け
国土交通省が主催する専門家会議設置の位置付け

  国土交通省専門家会議の第9回会合では、福岡捷二座長(中央大教授)が大井川流域に会議の内容を直接説明することに言及し、波紋を広げている。会議を主催する国交省鉄道局はリニア中央新幹線工事の早期開業を目指し、議論の中間取りまとめを急ぐが、専門家会議の位置付けやまとめの在り方を巡って県や流域との認識の違いが改めて浮き彫りになっている。
  昨年4月に始まった専門家会議は、膠着(こうちゃく)していた県有識者会議の議論の進展を促すために国交省が設置を提案した。昨年1月、県庁で国交省鉄道局の江口秀二技術審議官から提案を受けた難波喬司副知事は、国交省、県、JRの関係を図で示しながら「(専門家)会議はあくまでもJRを指導するためですね」と念押しした。
  第9回会合で、県有識者会議の専門部会長を兼務する森下祐一委員(静岡大客員教授)は「基本的には(国交省が指導するための)助言という位置付けだ」として国交省専門家会議の役割を再び確認した。福岡座長が意向を示した流域への直接説明は、会議の役割を逸脱していると懸念を示した。
  こうした議論を見守る利水関係者からは「利水者は国交省から水利権の許可をもらう立場。その下にある会議が説明に来れば(結論を受け入れるよう)見えない圧力を感じる」と困惑の声も漏れる。
  県はこれまでの議論を整理する必要性を認めながらも「会議は最終的な結論を出す組織ではない。(対話の)当事者ではなく中立的な立場の会議が当事者の地元に直接説明するのは、JR側に偏っているのではとの疑念を招く」(難波副知事)と指摘する。
  県が議論を求めた水資源と生物多様性に関する47項目のうち、「トンネル湧水の全量戻し」と「中下流域の地下水への影響」を含む半数以上は議論の対象になってきた。ただ、県はこれまでの専門家会議で「クリアになったものは一つもない」(県担当者)との受け止めだ。福岡座長は第9回会合で「中間的な取りまとめをする時期」だと発言したが、トンネル湧水の量や県外流出量の詳細な検討など、課題は積み残されたままだ。
  利水者にも専門家会議の動きは拙速と映る。農家に水を供給する大井川土地改良区の内田幸男理事長は「水量が減ってしまった場合の対応はまだ十分に議論されていないのに、中間取りまとめが確定した結論のようになっては困る」と戸惑いを隠さない。議論の取りまとめをしても、リニア着工の前提条件になる流域の「理解」を得られる見通しは立っていない。
  (「大井川とリニア」取材班)

  <メモ>国土交通省専門家会議設置の前提条件 県は専門家会議の設置に当たり国交省に対して、会議の全面公開と透明性の確保▽会議は国交省がJR東海を指導するための助言が目的▽中立公平な委員の選定―など五つの条件を提示した。国交省がこの条件を受け入れたため、会議が設置されたものの、委員の選定や会議の公開の在り方などを巡って当初から県と国交省の間の認識の相違が表面化し、現在も解消されていない。

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