女性の悩み、最新技術で安心感 「フェムテック」広がる取り組み

 最新技術を生かして女性特有の健康問題の解決を目指す「フェムテック」と呼ばれる製品やサービスが注目されている。新型コロナウイルス禍での健康意識の高まりや、ジェンダーに関連する課題の表面化などが背景にあるとされる。静岡県内をフィールドとする取り組みなどを紹介する。

乳がん検診 検査着のまま、痛みなく

 国立がん研究センターによると、日本人女性の9人に1人が罹患[りかん]する乳がん。女性のがんの中では最も多いがんだが、検診の受診率は約45%にとどまる。原因として、乳房を見られる恥ずかしさや検査の痛みがある。それらの課題をクリアする検査法の一つとして、「無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)」が注目を集めている。


photo02 「無痛MRI乳がん検診」のデモンストレーション=静岡市清水区の三上医院

 同検診では、検査着などを着たまま、乳房型にくりぬかれたベッドにうつぶせになり、約15分間で撮影を行う。豊胸術や乳がん術後でも受けられる。30~50代で多く、乳腺の密度が高い「高濃度乳房」は、マンモグラフィーでがんが見えにくいが、同検診でははっきりと映し出せるという。
 同検診は全国30施設で導入され、県内では三上医院(静岡市清水区)、焼津市立総合病院、すずかけセントラル病院(浜松市南区)で受診できる。
 撮影した画像は、同検診を考案した放射線科医の高原太郎東海大教授が中心となり読影する。報告書は単に「A~E判定」を伝えるのではなく、画像付きのリポートの形式で、所見を詳細に書き記している。高原医師は「受診者が問診票に書いた心配事にしっかり答えるよう心掛けている。『安心』を届けるのも検診の大きな役割」と強調する。
 このため検査費は2万円ほどで、マンモグラフィーと比べると高額。高原医師は「今後、検診が可能な医療機関を増やした上で、企業に対して社員への助成を働き掛けるなど、より多くの女性が受診しやすい環境を整えたい」と意欲を示した。


生理、妊活… 助産師らオンラインで助言

 掛川市の八神クリニックなど、愛知、岐阜県を中心に産婦人科主体の21のクリニックを運営する医療法人「葵鐘会」(愛知県)は、助産師らがオンラインで働く女性の健康に関する相談に乗る事業を展開している。経済産業省が本年度採択した「フェムテック実証事業」の一つ。それぞれが望むキャリア形成や職場での活躍を実現するため、体調面から女性をフォローする。


photo02 相談事業の実施に向け、動画教材を視聴する看護スタッフ=掛川市の八神クリニック

 実証事業は、中部国際空港旅客サービス(同県)の女性社員約500人を対象に行う。希望者はスマートフォンなどから予約した上で、1回30分間のオンライン相談を何度でも受けられる。これまでに、生理痛、妊活、更年期の症状などの相談が寄せられた。今後、相談を通じた利用者の意識や行動の変化などを調査する。
 同法人の助産師と看護師が現場で培った知識や経験を基に、相談者に寄り添う。女性の健康に関するオンラインサービスやアプリはすでに多く存在するが、事業を担当する最高戦略責任者の中上富雄さんは「各地にクリニックを持っているため、必要があればスムーズに受診につなげられるのが強み」と話す。
 八神クリニックの看護師長、笹本稲子さんは「生理などに関して、インターネットでも一般的な情報は得られる時代だが、実際は個々に応じた情報が求められている。気軽に1対1の相談ができる環境は安心につながるのでは」と事業の意義を語った。


復職支援アプリ 子育てとの両立、キャリア形成にヒント

 仕事と家庭の両立を支援する「ワークシフト研究所」(小早川優子代表、東京都)は、育児休業からの復職を支援するアプリ「piam.(ピアム)」を6月から提供している。


photo02 育休からの復職支援アプリ「ピアム」のイメージ

 同研究所は各地で育休中の女性を対象とした研修「育休プチMBA」を展開し、延べ1万人以上が参加。同研究所所長の国保祥子県立大准教授が監修した経営学をベースにした教材で、ディスカッションを通じ両立のための知見を学ぶ。一方、「両立への不安は、研修を受けていない女性たちにも共通する」(小早川さん)との考えから、より多くの女性と接点を持つため、アプリを開発した。
 妊娠中から復職1~2年までの女性に向けたアプリで、毎日2回、両立のためのヒントや知識を交えた応援メッセージが届く。カレンダーには「今日の自分を褒めるスタンプ」で自身の感情を記録する。小早川さんは「両立は大変だが、人から褒められることは少ない。少なくとも自分で褒めることは、自己肯定感を持つのに有効」と語る。
 そのほか、人には聞きにくい夫婦間のコミュニケーションやキャリアの悩みについてアンケートを行い、利用者間で結果を共有する機能もある。今後は、企業の課題に応じたカスタマイズや協業にも取り組むという。


女性の悩みをテクノロジーで解決「フェムテック」


 フェムテックは「female(女性)」と「technology(技術)」を合わせた造語。月経や妊娠、更年期に伴う女性の不安や悩みをテクノロジーの力で解決しようとする商品やサービスを指す。欧米が先行し、2025年の世界の関連市場は5兆円規模との試算もある。
 国内では、特殊繊維を使った生理用の吸水ショーツが大手企業から販売されるなどし、「フェムテック」という言葉が広く知られるように。21年新語・流行語大賞の候補30語にもノミネートされた。経済産業省は21年度、女性の就業継続を支えるフェムテックの普及を目的に、企業や医療機関の20事業を実証事業として採択した。
 フェムテックへの注目の背景には、新型コロナウイルス禍での健康意識の向上に加え、ジェンダーに関連する課題への関心の高まりもあるとされる。近年、これまでタブー視されていた生理や性教育に関する話題がオープンに語られるようになった。
 女性特有の生涯にわたる健康問題は多様。月経や妊娠だけでなく、摂食障害、女性特有のがん、骨粗しょう症など、フェムテックの活用が望まれる分野は幅広い。女性ヘルスケア市場専門の法人向けメディア「ウーマンズラボ」(ウーマンズ運営、東京都)編集長の星ノ矢子さんは「日本企業がより広い視野で性差に着目し、多様なフェムテック事業を生み出していくことが期待される」と指摘する。

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