構図一転の松崎町長選 確かな目で見る選挙に【湧水】

 任期満了に伴う松崎町長選が23日に告示される。現職の長嶋精一町長(70)が15日に急きょ出馬を断念し、新人同士の一騎打ちになる見通し。現町政の評価を問う選挙から一転し、「明確な争点がなくなった」との声が聞かれる。確かにその感は否めないが、候補者の訴えに耳を傾ける必要性が高まったとも言える。貴重な一票を誰に託すべきか、有権者はじっくり考えたい。
 立候補を予定するのは元町議の藤井要氏(70)と元町職員の深沢準弥氏(54)。藤井氏は少子化対策に力点を置き、遊び場の整備などを訴えるとみられる。深沢氏は民間と連携したまちづくりや防災などに注力するとしている。選挙戦に目を凝らせば、町民一人一人にとって暮らしに直結する何らかの施策が見えてくるはずだ。
 町は人口減少が加速し、コロナ禍で経済の低迷が続く。次期町長は次の4年間だけでなく、その先の町の将来も方向付ける重責を担うことになる。町には地縁血縁や義理人情、過去のあつれきなどにとらわれた選挙が根付くが、今回はそれで投票先を決めていいものか…。有権者は自分に問い掛けてほしい。
 長嶋町長の支援者については投票先に困る人もいるだろう。実際に白票を投じるか否か悩む声はある。町の未来を考えた上で候補者を選べないのであれば、その意思表示として白票を投じればいい。候補者やその関係者の好き嫌いを基準に投票先を選ぶよりは、はるかにましだと個人的には思う。
 町長を1975年から3期12年務めた故依田敬一氏は財政赤字を解消し、町の財政再生団体転落の危機を救ったことで知られる。その時に唱えた「花とロマンの里」は現在も町のキャッチフレーズとして使われ、依田氏の功績をたたえる人は少なくない。それほどリーダーの存在は大きく、良くも悪くも住民の記憶に残る。
 次の選挙で選ばれる町長はコロナ禍で課題山積の町を救い、良い記憶として語り継がれることができるのか。まずは、選挙戦を確かな目で見る有権者の姿勢にかかっている。

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