四元康祐さん 大岡信さんとの対話【創る その時、その心 ―しずおか連詩の会㊤】

 12月に開催される毎年恒例の「しずおか連詩の会」。5人の詩人が3日間、リレー形式で紡ぐ連詩40編は、一つ一つが単独の作品でもある。今年の参加詩人3人が、過去の「しずおか連詩の会」から自作2編を選び、その成り立ちを振り返る。初回は過去3度の参加経験がある四元康祐さん。

四元康祐さん
四元康祐さん

 初参加の2003年は、日本を離れて17年後でした。ぼくの詩人としてのデビューのきっかけをくれたのが(「しずおか連詩の会」を始めた)大岡信さんで、以前から連詩のことは聞いていました。
 この年の参加者は大岡さんと小池昌代さん、それからヘンク・ベルンレフさん、ウィレム・ファン・トールンさん。オランダのお二人は初対面でしたが、この出会いが翌年のロッテルダム国際詩祭への参加につながった。振り返れば、多くの海外詩人との交流の始まりが、03年の「しずおか連詩」だったんです。
 発句を担当することは創作初日の前夜、大岡さんから告げられました。寝ようとしても寝付けないので、夜の内に頭の中でたいがいの形は作ってしまいました。「発句はあいさつ」と大岡さんが言っていたので、大航海時代に世界中と交易していたオランダを描いて(オランダの2人を)お迎えしようという意図を込めました。
 初参加の創作全体を振り返ると、自分に余裕がなかったと思います。どの詩も背筋を真っすぐ伸ばして一生懸命書いた覚えがあります。
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 17年は、4月に大岡さんが亡くなった年。この年の連詩は6人でやったと思っています。創作の場には大岡さんの存在が常にあった。大岡さんの「連詩とはかくあるべし」を、参加者みんなが身に付けていて、自分が大岡さんになったつもりで宗匠の野村喜和夫さんを中心にわいわいがやがやと作りました。
 第39編で(大岡さんの長女)大岡亜紀さんが信さんの代表作をちゃんと読み込んで、お別れをしている。ぼくの揚句(第40編)は、ものすごく楽でした。最後に(葬式の鐘を)チーンと鳴らす程度でちょうどいい。
 1編ごとに大岡さんと対話をしてきた40編。最後は輪を閉ざすというよりも、輪の最初と最後がつながって、開かれていくような終わり方になりました。

 本当ですか、オランダ語には
 「水平線」を意味する単語が四つもあるというのは
 ランボーの見たスマトラの海、北斎の見た駿河の海
 ヴィーナスの下腹のように
 わたしたちの眼下で言葉の水平線が上下している
 (2003年しずおか連詩の会 水平線の巻 第1編)

 遠ざかりながら打ち寄せるもの
 絶え入りながら蘇るもの 無垢の帆を染める
 大いなる暁
 (2017年しずおか連詩の会 「岡を上りきると海」の巻 第40編)


 よつもと・やすひろ 詩人。詩集に『フリーソロ日録』、小説に『前立腺歌日記』、訳書に『月の光がクジラの背中を洗うとき -48カ国108名の詩人による連歌』『ホモサピエンス詩集』など。昨年春、34年ぶりにドイツから帰国。 

 ■12月9~11日 浜松で開催
 2021年の「しずおか連詩の会」(県文化財団など主催、静岡新聞社・静岡放送共催)は12月9~11日に浜松市内で創作を行う。参加者は野村喜和夫さん(詩人)、四元康祐さん(詩人)、東直子さん(歌人、作家)、高柳克弘さん(俳人)、水沢なおさん(詩人)。発表会は12日午後2時からアクトシティ浜松音楽工房ホール(同市中区)で。入場料は1000円。問い合わせはグランシップ<電054(289)9000>へ。

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