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遺族覚悟の「殺人」告訴 怒り、心の傷深く【熱海土石流】

 熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、起点の盛り土を含む土地の現旧所有者を殺人容疑で告訴した遺族は10日、不適切に盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社の元代表と安全対策を講じなかった現土地所有者の男性への怒りをあらわにしつつ、深い心の傷を抱えて生活する苦しみを吐露した。

殺人容疑の刑事告訴状を提出後、取材に応じる遺族の小磯洋子さん(右から2番目)ら=10日午後、熱海市
殺人容疑の刑事告訴状を提出後、取材に応じる遺族の小磯洋子さん(右から2番目)ら=10日午後、熱海市

 「娘は殺された。残された家族にも大きな爪痕を残した」。長女の西沢友紀さん(44)を亡くした小磯洋子さん(71)はそう声を振り絞った。
 最愛の娘を失った現実を今も受け入れられない。ただ、それ以上に気掛かりなのが友紀さんが残した5歳の孫娘の将来だ。母親を失ってから笑顔を見せなくなり、祖父母とも距離を置くようになったという。「成長に大きな影響が及ぶと思うと、盛り土を造成した業者はとても許せない。苦しみは続くが、ずっと闘っていく」と語気を強めた。
 小川徹さん(71)の遺影を抱いて熱海署に入り、告訴状を提出した妻慶子さん(71)は、排水設備などが設けられていなかった盛り土の崩落は「起きるべくして起きた」と指摘。現旧所有者の不作為に加え、危険な盛り土の存在を10年以上も住民に知らせてこなかった熱海市や県に対しても怒りをにじませ、「命を返して」と涙ながらに訴えた。
 母親の鈴木チヨセさん(82)を亡くした長男仁史さん(56)、次男英治さん(50)の兄弟は「責任の所在を明らかにしたい」と、300人以上の被災者の思いを背負う覚悟で告訴を決意した。
 被災後の報道で「初めて盛り土の存在を知った」という仁史さんは、法令違反を繰り返して盛り土を造成し、安全対策を講じなかった現旧所有者への怒りをあらわにする。英治さんは、不動産管理会社の元代表が県や市に数々の暴言を発し、行政指導を無視し続けた経緯に触れ、「『暴力行為』という表現が一番当てはまる。警察も明確な不法行為という認識を踏まえてしっかり捜査してくれるはず」と期待を込めた。

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