浜松日体 一丸の大逆転/浜松市立 歴史刻む独走 静岡県高校駅伝

 浜松日体と浜松市立が都大路行きを決めた。男子第72回、女子第34回県高校駅伝は7日、エコパスタジアムを発着点に行われた。

浜松日体の5区村井耀(右)からたすきを受け走り出す6区桂優介=小笠山総合運動公園
浜松日体の5区村井耀(右)からたすきを受け走り出す6区桂優介=小笠山総合運動公園
浜松市立の1区兼子心晴(左)から2区沢田結弥へたすきをつなぐ=小笠山総合運動公園
浜松市立の1区兼子心晴(左)から2区沢田結弥へたすきをつなぐ=小笠山総合運動公園
浜松日体の5区村井耀(右)からたすきを受け走り出す6区桂優介=小笠山総合運動公園
浜松市立の1区兼子心晴(左)から2区沢田結弥へたすきをつなぐ=小笠山総合運動公園

 男子(7区間42・195キロ)の浜松日体は3区児玉空琉、5区村井耀らが東海大翔洋との最大1分50秒差を縮め、アンカー柘植貫太で逆転して2時間10分18秒で4年ぶり8度目の頂点に立った。東海大翔洋が2位、浜松工が3位に入った。
 女子(5区間21・0975キロ)の浜松市立は1区兼子心晴が首位発進し、2区沢田結弥、3区宮田怜奈、5区伊藤果矢も区間賞。1時間12分23秒の好記録で初の栄冠に輝いた。東海大翔洋は2年連続2位。3連覇を狙った常葉大菊川は3位。
 男女の優勝校は12月26日の全国高校駅伝(京都)に出場する。

 ■「ミス取り返す」3年奮起 男子・浜松日体
 「全員駅伝」の真骨頂を見るような大逆転劇だった。男子の浜松日体は金原主将の故障欠場、1区のエース古井が脱水症状で大失速するアクシデントを一丸で乗り越えた。2区以降の6区間で区間賞4人、区間2位2人の圧倒的な総合力。一時は1分50秒差で追っていた東海大翔洋を最後は32秒も突き放した。
 3年生のミスは3年生が取り返す-。まずは3区で児玉が流れをつくった。「金原、古井とは3年間同じクラス。2人のために都大路につなげたかった」。1分2秒差に詰め寄り、翔洋の独走ムードを変えた。5区では金原の代役で出場した村井がエコパ記録を更新する8分51秒。3キロの短距離区間で14秒縮めて射程に捉えた。
 最終7区。15秒差を徐々に縮めてきた柘植が残り2キロで一気に仕掛けた。金原に代わってアンカー起用された2年生に臆する様子はない。「自分でゴールテープを切れるアンカーをやりたかった」。最後はイメージ通り、右手を突き上げて逆転劇を完結させた。
 7人全員が5000メートル14分台。誰がどの区間でも走れる選手層の厚さを証明した。全国では古井が雪辱を期し、金原も復帰予定。ともに「今日は仲間のおかげ。都大路で取り返したい」と誓った。

 ■エース兼子 勝負決める 女子・浜松市立
 過去33回で6校しかいない女子歴代優勝校の系譜に新たな歴史を刻んだ。浜松市立がエコパ記録にあと11秒に迫る1時間12分23秒で初優勝。ライバルに影も踏ませず独走した。
 エースが勝負を決めた。最長6キロの1区。3年兼子が2キロ過ぎの下りで仕掛けた。全国総体1500メートル3位のスピードランナーを誰も追い掛けられない。有力校を1人で50秒以上引き離した。「2区以降も力のある選手ばかり。大丈夫」。勝利を確信した。
 都大路への分岐点は夏の東海総体直後にあった。全国出場をあと一歩で逃し、引退を考えた伊藤を兼子らが説得した。例年、総体後は大学受験に専念する3年が多いが、県高校3000メートルランク3位の伊藤は欠かせない。「2人で都大路に行きたい」という兼子の言葉に、伊藤も応えた。
 最終5区。アンカー伊藤は区間賞の快走でフィニッシュテープを切り、歓喜の輪に飛び込んだ。受験との両立に心が折れ掛けた時期もあったが、「続けなかったら絶対に後悔していた。感謝しかない」と満面の笑みだ。
 現在の2、3年には県内中学から全国の強豪校に進んだ選手が多い。兼子は「静岡でも頑張れるところを見せたい」と入賞を狙う。杉井監督は浜松商時代の1998年以来の都大路。「勝負できるメンバーはそろっている」と自信を見せた。

 ■男子・翔洋2位 勝負どころで誤算
 5000メートル13分台の絶対エース兵藤で先行し押し切る-。東海大翔洋は狙い通りにレースを運んだ。唯一の誤算は大量リードを守ろうと勝負どころで「受け身の走り」(秋岡監督)になったことか。つかみかけた初の都大路は残り2キロですり抜けた。
 兵藤は最長10キロの1区をエコパ記録に迫る29分54秒で後続を1分近く引き離した。2区以降も大きな失速はなかったが、わずかに積極性を欠いた。2番目に長い3区、勝負を決める7区を担ったのは2年生。兵藤は「3年が底上げできず、主要区間を下級生に任せてしまった」と主将の責任を口にした。
 大学ではトラックと駅伝の両立を目指す。「やってきたことは間違っていない。来年はやってくれるはず」と、初優勝を後輩に託した。

 ■女子・翔洋も2位 雪辱果たせず
 東海大翔洋は2年連続の2位。悲願の都大路行きは果たせず、2区を走った妹尾主将は「昨年のリベンジができず悔しい」と涙をぬぐった。
 この1年間はチームでエコパスタジアムに何度も下見に訪れ、頂点に立つための戦略を練ってきた。しかし、序盤から浜松市立の背中は遠かった。
 秋岡監督は「来年以降につなげるため」に、3区以降は2位狙いを指示。選手は昨年優勝をさらわれたライバル常葉大菊川に勝つことだけに集中した。4区甲斐が1年生ながら区間賞の走りを見せるなど奮闘し、最後まで2位の座は譲らなかった。
 2年前に3位に入って以降、チームは安定した結果を残し続ける。秋岡監督は「今日の2位が(壁を乗り越える)一つのきっかけになれば」と話した。

 ◇…男子…◇
 ①浜松日体(古井、須田、児玉、鈴木、村井、桂、柘植)2時間10分18秒②東海大翔洋(兵藤、佐野、橘、山崎、中村、西川、関)2時間10分50秒③浜松工(古橋、大石、村松、野中、村田、小林、本間)2時間11分7秒④藤枝明誠2時間12分44秒⑤加藤学園2時間13分47秒⑥島田2時間13分58秒⑦韮山2時間14分42秒⑧浜松商2時間14分55秒⑨常葉大菊川2時間14分56秒⑩日大三島2時間15分22秒⑪御殿場西⑫浜松北⑬伊豆中央⑭富士宮北⑮浜松開誠館⑯清水桜が丘⑰浜松市立⑱富士⑲磐田農⑳湖西(21)浜松湖北(22)三島北(23)浜松西(24)藤枝東(25)磐田南(26)天竜(27)科学技術(28)沼津東(29)掛川西(30)焼津中央(31)沼津市立(32)浜松湖南(33)浜北西(34)静岡東(35)誠恵(36)磐田東(37)袋井商(38)吉原工(オープン参加=静岡・静岡市立・静岡西、知徳・暁秀)

 ◇…女子…◇
 ①浜松市立(兼子、沢田、宮田、加治屋、伊藤)1時間12分23秒②東海大翔洋(千葉、妹尾、清水、甲斐、依田)1時間14分4秒③常葉大菊川(沖、安藤、渡辺、民谷、市川)1時間14分27秒④日大三島1時間15分9秒⑤浜松工1時間15分50秒⑥韮山1時間17分42秒⑦サレジオ⑧浜松商⑨知徳⑩伊豆中央⑪沼津東⑫浜松開誠館⑬磐田南⑭三島南⑮静岡商⑯富士市立⑰静岡⑱加藤学園⑲磐田北⑳磐田農(21)浜松北(22)浜松湖南(23)静岡東(24)袋井商(25)御殿場西

 ◇…区間賞…◇
 【男子】
 ▽1区(10キロ) 兵藤ジュダ(東海大翔洋3)29分54秒
 ▽2区(3キロ) 佐野涼介(東海大翔洋3)9分16秒
 ▽3区(8.0975キロ) 児玉空琉(浜松日体3)24分30秒
 ▽4区(8.0975キロ) 野中 恒亨(浜松工2)25分4秒
 ▽5区(3キロ) 村井耀(浜松日体3)8分51秒
 ▽6区(5キロ) 桂優介(浜松日体3)14分59秒
 ▽7区(5キロ) 柘植貫太(浜松日体2)15分33秒
 【女子】
 ▽1区(6キロ) 兼子心晴(浜松市立3)20分18秒
 ▽2区(4.0975キロ)沢田結弥(浜松市立1)13分45秒
 ▽3区(3キロ) 宮田怜奈(浜松市立2)10分21秒
 ▽4区(3キロ) 甲斐美波(東海大翔洋1)10分11秒
 ▽5区(5キロ) 伊藤果矢(浜松市立3)17分29秒

 ◇…過去10年の優勝校…◇ 
      【男子】     【女子】
 2011年 浜松日体⑦    三島北(40)
   12年 島田(26)   常葉菊川⑱
   13年 加藤学園(32) 島田(28)
   14年 加藤学園(25) 島田(30)
   15年 加藤学園⑧    常葉菊川(44)
   16年 浜松商⑭     島田(31)
   17年 浜松日体⑥    常葉大菊川⑲
   18年 韮山⑲      島田(30)
   19年 島田(46)   常葉大菊川(25)
   20年 浜松商⑳     常葉大菊川(28)
 ※丸数字は全国大会順位

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