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社説(11月7日)自公絶対安定多数 1票の選択かくも重い

 政権選択の衆院選で岸田文雄首相率いる自民、公明両党の連立政権は絶対安定多数の議席を確保しました。新型コロナ対策で国や自治体の政策を注視せざるを得ない中での選挙でした。私たち有権者は何を選択し、投票結果がどんな変化をもたらすのか。改めて考えてみましょう。
 各党は暮らしと経済の再生を実現する多様な政策を掲げました。野党は自公政権の対策を「失政だ」と強く批判し続けましたので、選挙結果は自公政権の対策に一定の評価を与えたと言えます。
 絶対安定多数は、法案審議の最前線となる常任委員会での委員長ポスト独占と委員の過半数確保を意味します。コロナ対策を主導する強い権限を引き続き自公政権に委ねたことになります。自公は岸田首相が掲げた「新しい資本主義」を具体化する経済対策の予算化を狙うでしょう。

 ■憲法改正の行方
 憲法改正に前向きな「改憲勢力」の議席数が、国会発議に必要な定数の3分の2(310)を維持しました。
 政府は新型コロナ感染症対策で、「要請」により経済活動を止めました。緊急事態において私権を政府や自治体がどこまで制限できるのかは憲法に関わる新たな命題です。コロナ禍で一層顕在化した格差や不平等は、憲法を見つめ直し、改憲の是非を議論する契機になりました。
 岸田首相は開票日翌日の記者会見で「憲法改正に向け精力的に取り組んでいく」と述べました。公明党との連立政権合意には「国民的議論を深め、合意形成に努める」とあります。自公の具体的行動が問われることになります。
 歴史的共闘で政権の受け皿をアピールした立憲民主、共産の両党が議席を減らしました。共闘は小選挙区の選挙戦術としては奏功し、立民は引き続き野党第1党の重責を担います。ただ、比例区での得票減は痛手です。
 衆院選の投票結果を受けた緊急世論調査で、統一候補を擁立した5野党の共闘関係を「見直した方がいい」と回答した人は61%に上りました。自衛隊、原発、日米関係など国の骨格をなす基軸政策を脇に置いたことで、目指す政権の姿が曖昧になったとの分析が出ています。失政批判のみを繰り返す野党連携なら、与党は「くみしやすし」と判断するでしょう。権力の暴走を常態化させる危険をもはらんでいます。

 ■説明しない政治
 給付金や減税のバラマキ政策を有権者はどう判断したのでしょうか。野党共闘に加わらず、「まずは行財政改革」と愚直に訴えた維新の会の大幅な議席増に着目すると、少なくとも野党への追い風にはならなかったようです。
 政治が、国民に税負担の必要性を真摯[しんし]に訴えなくなって久しい。取材では、国の巨額借金のつけを回される若者に政治への無関心が多い一方、国民に耳障りなことでも率直に訴える政治家を求める声がありました。
 過去、消費税率を3%から5%に引き上げた橋本龍太郎首相は参院選で敗北し、辞任に追い込まれました。民主党の野田佳彦首相は「政治生命を懸ける」として消費税を段階的に5%から10%まで引き上げる増税法を成立させましたが、衆院選で惨敗して政権から転落しました。
 これでは、「増税を言えば選挙は負ける」との逃げ口上を有権者が与えているのと同じです。政治家に改革を断行させるのも、バラマキを言わせるのも、本をただせば有権者の1票の選択なのです。
 今回選の小選挙区の投票率は戦後3番目に低い55・93%でした。半分近い有権者が棄権しました。民主主義の多数決の原則は、少数意見を尊重し、議論を尽くして採決した結果をその集団の一致した意見とし、皆が従う仕組みです。投票権の放棄は、政権に「白紙委任状」を手渡したのと同じことなのです。

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