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大自在(11月7日)良質米の産地

 向田邦子脚本のドラマ「阿修羅[あしゅら]のごとく」(1979年)に、4姉妹がにぎり飯を一緒に作る場面がある。未婚の三女(30)が専業主婦の次女(41)の手元を見て言う。「あら、三角なの?」「うち、俵じゃなかった?」。
 長女(45)はたいこ形に握った。「お嫁にゆくと、行った先のかたちになるの」と次女。ボクサーと同棲中の四女(25)は「すみません、いつまでも俵形で…」。おむすびは、それぞれの事情や隠し事を暗示しているようでもある。
 同じ食べ物を「おむすび」と呼ぶか「おにぎり」か。由来は諸説あるようだが、おむすびは縁を結ぶよう、おにぎりは「鬼切り」に通じる魔よけの祈りが込められたという説は興味深い。
 食料、税、俸給など、コメと稲作、米食は日本文化の深層にある。全国各地、荒れ地に水が引かれて水田があるのも、イネは南方原産なのに東北や北陸の寒冷地で良質米が取れるのも、開墾や品種改良など先人の労苦のおかげだ。
 川勝平太知事が参院補選の応援演説で、自民公認候補の地盤の御殿場市には「コシヒカリしかない」などと発言し顰蹙[ひんしゅく]を買った。知事は謝罪したが、批判はやみそうにない。豊葦原[とよあしはら]の瑞穂の国にあって、良質米の産地がどれほど誇らしいことか、選挙戦最終日という特殊状況が判断を鈍らせたのか。
 ただ、演説動画も反発も主にネットが舞台というのはいただけない。知事選、参院補選の続きがこれでは場外乱闘と言われても仕方ない。知事と自民県連は議場で、適地適作など実を結ぶ論戦をしてほしい。レフェリーは県民である。

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