パリパリ+ジューシー「あの唐揚げ」を親子で再現 専門店「唐揚げ十四番」(富士市吉原)【記者さんぽ|個店めぐり】

 食欲の秋。ガッツリ系の物が食べたくなり、富士市の吉原商店街にことしオープンした唐揚げ専門店「唐揚げ十四番」(富士市吉原)を訪ねました。東海道五十三次の14番目の宿場町だったことにちなんだ名前です。シックな黒い外観が目印です。

ビアガーデンのから揚げ再現を追求する鈴木大介さん。プラ容器の削減など、SDGsも意識しています
ビアガーデンのから揚げ再現を追求する鈴木大介さん。プラ容器の削減など、SDGsも意識しています

 店内は50平方メートルほど。入るとすぐ、商品ケースが目に入ります。商品は、骨付きもも、骨付き手羽、骨なしブツの3種類。国産鶏を2度揚げすることで、外はパリパリ、中はジューシーな食感に仕上がっています。コショウ、ニンニク、ショウガといったスパイスは不使用。優しい塩味で、子どもにも食べやすいと評判だそうです。
 骨付きの2つは私(記者)の手の平くらいの大きさで、唐揚げというよりフライドチキンのイメージに近い気がしました。
 ちなみに日本唐揚協会によると、「唐揚げは肉に味が付いている」「フライドチキンは衣に味が付いている」というのが元々の定義とのことです。ただ、時代と共にボーダーレスとなり、肉に味を付けず衣に味付けした唐揚げも、その逆も存在するのだとか。唐揚げ十四番の唐揚げは、肉にも衣にも味が付いているそうです。
photo01 付け合わせのブロッコリーと比べると、唐揚げの大きさが際立ちます。唐揚げは量り売りです
 開店は2021年4月。オーナーの鈴木大介さん(34)は「思い出の味を再現したかった」と開店の経緯を話してくれました。思い出の味とは、かつて吉原商店街にあったビアガーデン名物の唐揚げ。地上8階建ての「星一ビル」の屋上で50年以上前から開かれ、夏の風物詩「星一のビアガーデン」と呼ばれ、市民に親しまれてきたそうです。
 鈴木さんの父親・篤さん(65)がここで調理スタッフをしていて、鈴木さん自身も学生時代、ホールスタッフのアルバイトをしていました。「唐揚げ目当てに開店前から行列ができて。とても賑わっていた」と目を細めます。
photo01 父の篤さん(左)から唐揚げ作りのこつを教わる大介さん
 ビルが老朽化して、ビアガーデンは10年ほど前になくなってしまいました。しかし、その後も鈴木さんの周りからは「またあの唐揚げを食べたいね」という声が上がっていました。
 鈴木さん自身も好物だったため、当時のビアガーデン関係者に承諾を得て、唐揚げの復活を企画。鶏の切り方、味付け、衣の水加減、揚げ具合など、父の篤さんから細かく指導を受けました。そして2020年夏、商店街の別のビルでビアガーデンを開き、名物の唐揚げを再び市民に販売しました。
 当時を知る人からは「懐かしい」と喜ばれ、知らない人からも大きなサイズや独特の食感が好評だったため、思い切って常設店をオープンしました。コロナ禍での開店となりましたが、幅広い客層が訪れているそうです。


 最近、街中で唐揚げ店の新規出店をよく見掛けます。

 市場分析などを行う「富士経済」(東京都)によると、唐揚げをメーンに販売するテークアウト、イートイン、デリバリーなどの市場規模は年々拡大傾向にあります。背景には、共働き世帯の増加や煩雑な油処理の敬遠などがあるそうです。コロナ禍の外食機会の減少により、2021年には1200億円に達する見込みだそうです。
photo01 外観にはかわいいイラストも。取材時はハロウィーンの絵柄でした
 鈴木さんは「うちの唐揚げは味付けも食感も独特。ぜひ他店と食べ比べてみて」と唐揚げファンにアピール。「星一のビアガーデンのように、唐揚げ十四番を富士の名物にしたい。プライドを持ってあの味の再現を追求したい」と目を輝かせました。

 ※【記者さんぽ|個店めぐり】は「あなたの静岡新聞」編集部の記者が、県内のがんばる個店、魅力的な個店を訪ねて、店主の思いを伝えます。随時掲載します。気軽に候補店の情報をお寄せください。自薦他薦を問いません。取材先選びの参考にさせていただきます。⇒投稿フォームはこちら



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