「旅するチョウ」児童が研究 地域越えた交流に期待【黒潮】

 藤枝市岡部地区にある朝比奈第一小の児童が「旅するチョウ」として知られるアサギマダラの研究を進め、地域を巻き込んだ活動に発展させている。子どもたちが昆虫の生態だけでなく、さまざまな関係者と交流を深めることにも期待したい。
 アサギマダラは東アジア原産のチョウで、黒や茶色にまだら模様がある美しい羽が特徴。2千キロ超の距離を移動し、暖かい場所に南下する秋ごろには日本から海を渡って台湾や香港などに到達する個体もいるという。一方、詳しい飛行ルートなど、謎に包まれている部分も多いとされている。
 同校近くの「玉露の里」で、好物のフジバカマの蜜を求めてアサギマダラが集まっていたことをきっかけに、昨年度に研究が始まった。校内にフジバカマの花壇を設置するなど活動を本格化させている。
 3、4年生は10月、同校を訪れたチョウに印(マーキング)をつけた。羽の白い部分に油性ペンで「フジエダ」の文字や通し番号、日付を記した。他県の愛好家グループと連絡を取り合い、印を付けた個体が他の場所で見つかれば同校に報告が来るようになっているという。児童の1人は「元気に飛び続けて、すごく遠くまで行ってほしい」と声を弾ませた。
 天野和博校長によると、昨秋は同校のフジバカマに約400頭が飛来した。栃木県日光市でマーキングされ、2カ月以上かけて同校にやってきた個体もいた。児童が本年度に印を付けたチョウも、掛川市内で発見されている。チョウの研究が地域を越えた交流につながっている。
 同校の取り組みは、今季から岡部地区の別の小中学校や保育園にも広がった。天野校長は「活動を通して生まれた縁を大切にして、子どもたちの成長につながれば」と意義を語る。
 取材では目を輝かせながらチョウを追い掛ける児童の姿が印象的だった。コロナ禍で人々の移動が難しい時期だからこそ、アサギマダラには悠々と遠くまで飛んでもらい、人々の結びつきを育んでほしい。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞