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特集 : 福祉・介護

入居者も次世代へ1票 高齢者施設・不在者投票 衆院選静岡

 市街地を離れた静岡市葵区の山里にある高齢者施設に、1票を託す先を真剣に選ぶ車いすの入居者とそれを支える職員の姿があった。31日投開票の衆院選で、同区富沢の特別養護老人ホーム「晃の園」が設置した不在者投票会場を26日に訪ねた。

介助者の協力を得て、真剣なまなざしで一票を投じる男性入居者=26日、静岡市葵区富沢の特別養護老人ホーム「晃の園」
介助者の協力を得て、真剣なまなざしで一票を投じる男性入居者=26日、静岡市葵区富沢の特別養護老人ホーム「晃の園」

 投票用紙を入れる封筒に自分の名前を書き、候補者と政党を選ぶ。1人の投票にかかる時間は5~10分。認知症が進む入居者の中には、投票用紙を目の前にして10分以上考え込んでしまう場合も。介助者はじっと意思決定を待つ。
 「社会とつながっているという実感が持てる唯一の機会なんです」。同ホーム統括部長の川崎誠之さん(38)は入居者が投票を望む理由を説明する。普段は口数が少なく、あまり活発ではない人も、投票になると急にしゃんとして職員を驚かせるという。新型コロナウイルス禍で家族との面会が制限される中、入居者の投票に対する思い入れはさらに強まっている。
 隣接するケアハウス「ラポーレ駿河」に回り、70~80代の入居者に政治への思いを聞いた。「ばらまきの公約ばかり。どこかで財政が破綻する。しっかり経済を立て直さないと」。与野党の訴えに厳しい目を向けるのは西田朝子さん(86)。望月良さん(84)は「野党がもっと意見を統一し、与党に立ち向かわないと。二大政党ができないと政治に緊張感が生まれない」と主張する。
 若者の政治離れについて意見を求めると、輪島節子さん(72)は「ネット社会の発達もあり、今の若者は周りからどう見られるか、反応を気にしすぎている」と指摘した上で、「政治に無関心は駄目。自分の意見をしっかり持つことが大事」と答えた。同施設は28日に不在者投票を行う予定。3人は次世代への期待を込め一票を投じる。

 【記者の目】〝情熱〟どう伝える 
 政治と若者について、ケアハウス「ラポーレ駿河」で取材した3人の高齢女性の議論は白熱した。
 西田さんは若い頃、学生運動に関わり、安保反対で国会前のデモに参加した。「日本を良くしようと政治家だけでなく、国民全体で考えるのが総選挙」。インドネシアで暮らしたこともあり、「向こうは選挙になると国中が沸く。貧しい国は立派な指導者を選ぼうと懸命」と振り返る。
 父親が政治家でウグイス嬢を務めたという望月さんは「政治が若者から離れている。若者が参加する道筋をつくらないと」と求め、輪島さんは「根本は教育」と指摘した。
 「今の若者には未来を切り開こうという情熱が足りない。あなたがしっかり伝えないと」。人生の大先輩から叱咤(しった)激励を受けた。

 <メモ>不在者投票制度は、投票所に行くことが難しく、病院に入院している人などがその施設内で投票できる制度。県内では病院をはじめ、高齢者施設や身体障害者施設など、計596カ所が指定を受けている。投票用紙に自ら記入するのが難しい場合は代筆を行うが、介助者のほかに立会人を置き、投票の公正さを担保する。

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