熱海土石流 静岡県警が関係先捜索 盛り土現旧所有者の捜査着手

 26人が死亡し、1人が行方不明になっている熱海市伊豆山の大規模土石流で静岡県警は28日、業務上過失致死容疑などで、起点となった盛り土部分を含む土地の現旧所有者の関係先などを対象にした家宅捜索に乗り出した。土石流の発生から間もなく4カ月。県警は現旧所有者の責任追及に向け、本格的な捜査に着手した。関係者への取材で分かった。

関係先に家宅捜索に入った捜査員ら=28日午前11時50分ごろ、神奈川県小田原市
関係先に家宅捜索に入った捜査員ら=28日午前11時50分ごろ、神奈川県小田原市
熱海市伊豆山の盛り土を巡る主な経緯
熱海市伊豆山の盛り土を巡る主な経緯
関係先に家宅捜索に入った捜査員ら=28日午前11時50分ごろ、神奈川県小田原市
熱海市伊豆山の盛り土を巡る主な経緯

 関係者によると、捜索は神奈川や東京、静岡などの関係先約20カ所になる見通し。捜査員百数十人態勢で捜索に当たる。関係資料などを押収した上で、現旧所有者らが盛り土の崩落の危険性を認識し、危険回避のための対策を施していたかなどを焦点に捜査を進めるとみられる。
 ただ、自然災害が絡む上、関係者も多いことから、業務上過失致死容疑などでの立件の可否について結論が出るまでは時間を要するとの見方もある。県警は他の法令違反の有無も含め、幅広く捜査を進める。
 大規模土石流を巡っては、77歳の母親を亡くした瀬下雄史さん(53)=千葉県=が8月、盛り土を造成した旧所有者を業務上過失致死容疑で、2011年に土地を譲り受けた現所有者を重過失致死容疑で熱海署に告訴した。遺族と行方不明者の親族計11人は近く、追加の刑事告訴をする方針を示している。
 遺族や被災者でつくる「被害者の会」は現旧所有者などを相手に損害賠償請求訴訟を起こしている。

 ■捜査員慌ただしく
 土石流の起点になった盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)の関係先である事務所には28日午前11時45分ごろ、捜査車両が次々に到着し、県警の捜査員約15人が捜索に入った。捜査員らは慌ただしく建物の周辺に規制線を張り、ごみなどが散乱する敷地内に足早に入った。

 〈熱海市伊豆山の大規模土石流〉7月3日午前10時半ごろに発生した。逢初(あいぞめ)川上流の盛り土が崩落し、下流の集落を巻き込んだ。26人が死亡、1人が行方不明となっている。県と熱海市による調査で業者の不適切な開発行為が明らかになったほか、市が措置命令を見送っていたことなども判明した。遺族が土地の現旧所有者を業務上過失致死容疑などで刑事告訴。遺族や被災者ら70人が、現旧所有者らに約32億円の損害賠償を求め静岡地裁沼津支部に集団訴訟を起こした。

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