大自在(10月28日)パンダの日

 もう10年以上前だが、幼い息子2人を静岡市日本平動物園に連れて行った時のこと。「動物園の人はすごいなあ。動物をこんなに山から捕ってきたなんて」。独自の解釈に基づき、しきりに感心する次男。一つ上の長男は「違うよ。動物はみんな、お取り寄せだよ」。どちらが漫才のボケともつかぬやりとりだった。
 国内外からの多種多様な「お取り寄せ」の中で、今も昔も人気者の代表格はパンダだ。「パンダ外交」という言葉があるように、日中間の親善大使の役割も果たす。実際の両国は微妙な関係が続くけれど。
 1972年10月28日、東京・上野動物園に最初のジャイアントパンダ、ランランとカンカンがやって来た。これを記念して、同園はこの日を「パンダの日」と制定した。
 「読むパンダ」(白水社)に、元飼育課長中川志郎さんがランラン、カンカンとの初対面を振り返るくだりがある。「シートを外したら、甘酸っぱい匂いがパッときたですね」。パンダ特有の芳香なのだという。「日中友好のシンボルという肩書が、私たちの緊張を、いやがうえにも高めていた」と当時の不安も打ち明けている。
 先日、上野動物園に足を運んだ。新型コロナウイルス対策の来場制限が続く中、シャンシャンやリーリーが展示されているパンダ舎の前は相変わらずのにぎわい。「客寄せパンダ」は健在だった。
 一方、真っ最中の衆院選の各候補者はどうか。パンダにはかなわなくとも、説得力のある訴えで有権者を引きつけているだろうか。投開票日は31日。間もなく「白黒」が付く。

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