施工費未払いで安全対策中断 盛り土造成会社元幹部【熱海土石流】

 熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)の元幹部が2011年以降、熱海市の指導に従って安全対策などを講じていた施工業者とも連絡を絶ち、本来負担すべき施工費を支払っていなかったことが、27日までの関係者への取材で分かった。
 業者への未払いにより11年、工事はわずか2カ月で中断した。安全確保に必要な措置が講じられていないのを認識しながら関係者の連絡にも応じず、支払い義務を逃れようとしたとみられ、静岡県や市が詳しい経緯を調べている。遺族は元幹部や現土地所有者らを業務上過失致死容疑などで刑事告訴していて、県警は近く、本格捜査に乗り出す。
 関係者によると、盛り土の起点となった土地が不動産管理会社の所有だった10年、元幹部は当時土地の購入を検討していた現所有者とともに現地を訪問。不動産管理会社側が盛り土の中の産業廃棄物を撤去し、県土採取等規制条例で設置が義務付けられた排水設備やため池を造ることで合意した。その後、同社側が山梨県甲州市の業者に排水設備の設置工事を依頼。業者は土地が現所有者に引き渡された約半年後の11年8月に着工したが、10月に中止したという。
 土地の所有権移転後、熱海市は不動産管理会社の経営状態が急速に悪化し、会社としての実態がなくなりつつあることを危惧していた。元幹部と連絡を取ることが難しくなる中、現地立ち会いなどには別の担当者らが代理で来ることもあったという。
 土石流の遺族や被災者でつくる「被害者の会」はこの元幹部や現土地所有者などを相手に損害賠償請求訴訟を起こした。遺族と行方不明者の親族計11人は近く、追加の刑事告訴をする方針。

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