静岡の居酒屋 活気戻らず続く苦境 緊急事態解除、間もなく1カ月

 静岡県内に発令された新型コロナウイルス緊急事態宣言が解除されて間もなく1カ月。休業要請の取り下げで飲食店に明かりはともったが、コロナ前のような活気は戻っていない。飲食店は依然、苦境にある。金融機関からの借り入れが数千万円に膨らみ、必死に生き残りを模索する静岡市内の居酒屋を取材した。

客足が戻らない中、必死に生き残りを模索する市川岩生さん(手前)=22日、静岡市葵区
客足が戻らない中、必死に生き残りを模索する市川岩生さん(手前)=22日、静岡市葵区

 「薬味の準備をお願いします」。22日夜、同市葵区呉服町の居酒屋「府中かしわで」。がらんとした店内で、従業員が開店準備に追われた。この日の予約は3組でいずれも2、3人の小グループ。代表の市川岩生さん(46)は伝票を整理しながら「ようやくまん延防止等重点措置前に戻ったが、コロナ前にはほど遠い」と嘆いた。
 市川さんは元々、市中心部で別の居酒屋を経営し、事業拡大のため2018年に同店を開業した。黒字転換し「今後が楽しみだった」(市川さん)直後、コロナ禍で事態は暗転した。金融機関に借り入れに走り、国の雇用調整助成金(雇調金)などで息をつないできた。客足は戻らず、数千万円の借入金から運転資金をまかなっている。
 1年半後には、毎月70万円の返済が始まる。相談した専門家からは、店舗整理を助言された。ただ、残した1店舗で多額の負債を返済できる見通しはない。何より従業員約20人の雇用を守りたい思いは強い。「耐えるしか、選択肢はない」
 市内の百貨店で取り扱っている総菜の販売強化や、日中は店内をカフェタイムにするなど、新たな収益源を探っている。とはいえ、収益の柱であるアルコール需要が戻らない影響は甚大だ。
 「雇用を守り地域経済に貢献したいと思うが、個人の努力だけでは限界がある」。景気が回復するまで、国などに雇調金の継続や融資返済の繰り延べなど、もうしばらくの支援を求める。

 ■人々の行動変容 デジタル化必須
 民間信用調査会社の東京商工リサーチ静岡支店によると、2021年度上半期(4~9月)に県内で倒産した飲食や宿泊などサービス業の件数(負債額1000万円以上)は23件。担当者は「融資や助成金の効果で倒産件数は抑えられているが、返済できなくなれば一気に増える恐れがある」と指摘する。
 静岡経済研究所の恒友仁常務理事は「人々の行動変容が起きていてコロナ前に戻ることは考えにくい」と指摘し、「接触や密を避けてサービスが受けられるようネット販売の充実や電子マネー導入など、デジタル化の推進は必須」と強調する。

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