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熱海土石流被災者 政治にきめ細かな支援求める 復興ほど遠く

 大規模土石流の発生から4カ月近くたった熱海市の伊豆山地区は、主要な生活道路の復旧が進み、少しずつ経済活動も再開している。しかし、いまだ行方不明者1人の捜索が続き、「復興」までの道のりは険しい。疲弊した地域を立て直そうとする住民は、被災地の実情をくみ取る姿勢ときめ細かな支援を政治に求めている。

被災後に購入した介護タクシーに車いすを乗せる河瀬豊さん=20日、熱海市伊豆山
被災後に購入した介護タクシーに車いすを乗せる河瀬豊さん=20日、熱海市伊豆山

 「正直言って、がっかりした」。被災した小規模事業者向けに、15日に市役所で開かれた支援制度説明会。伊豆山で介護タクシー「伊豆おはな」を経営する河瀬豊さん(51)は、落胆した表情でつぶやいた。
 土石流の現場から約30メートルの場所に事務所を構える河瀬さんは、所有していた業務車両3台のうち1台を失った。残る2台で発災翌日も仕事を続けたが、道路の通行止めや車両の減少の影響で依頼を断らざるを得ない日々が続いた。
 「これ以上、高齢者に負担をかけたくない」。そんな思いから、車両保険で下りた100万円と融資50万円を投入して8月下旬に車を1台購入した。
 国の補助を活用して県が設けた小規模事業者向けの支援制度は、事業再建に必要な建物修繕や車両購入などの経費が75万円以上の場合が対象。補助上限額は7500万円。ただし経費から保険金は控除される。経費が75万円以下なら、国の小規模事業者持続化補助金を活用する方法もあるが、採択される前に支出した経費は対象外になる。
 そのため河瀬さんはどちらの制度も利用できない。「事業者が早く立ち直ることが復興につながると思っているのに、これでははしごを外された感じ。実態に合った制度とは思えない」と不満を口にする。
 弁当店「喜与味」の高橋一美さん(45)も店舗に土砂が流入し、約1カ月間の休業を余儀なくされた。県の支援制度の利用を検討しているが、「わざと利用しにくくしているのかと思ってしまう。周囲の事業者の中には申し込んでも『どうせ駄目だろう』と諦めている人もいる。どんな支援が必要なのか、住民の生の声を聞いてほしい」。心身ともに疲れ切っている被災地の住民の声をこう代弁した。

 ■熱海市 2009年にも命令見送り 盛り土業者に
 熱海市伊豆山の大規模土石流の起点に不適切な盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)に対し、市が2009年11月に県土採取等規制条例に基づく措置命令の発令を検討したものの、見送っていたことが25日までに、県や市の行政文書で分かった。市が11年にも命令を見送ったことが既に判明していて、少なくとも2度にわたり法的措置をためらっていたことになる。
 文書などによると、同社は06年9月に伊豆山の土地を取得後、07年3月に市に盛り土を届け出て受理された。ただ、08年4月の工事完了期限を過ぎても土砂搬入を続けた。
 市は09年11月、工期変更届などを提出するよう要請し、期限までに提出しない場合は安全対策を講じるよう求める措置命令を出すと伝えた。同社が12月に書類を提出したため、市は措置命令を見送ったとみられる。

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