妊娠SOS相談 適切な支援、社会全体で【解説・主張しずおか】

 思いがけない妊娠に悩んだり、出産に迷ったりしている女性が匿名で電話やメールで相談できる「妊娠SOS相談」。静岡県内は10年前から、県と浜松市が妊娠SOSの看板を前面に出す。命に関わるデリケートな悩みを一人で抱える女性は絶えない。適切な支援にどうつなげるか、関係者の模索が続く。

県の「しずおか妊娠SOS相談」を受ける助産師。悩みに寄り添い、次の支援につなげる=10月上旬、県内
県の「しずおか妊娠SOS相談」を受ける助産師。悩みに寄り添い、次の支援につなげる=10月上旬、県内

 窓口開設のきっかけは、厚生労働省が2011年にまとめた児童虐待に関する通知。生後間もない虐待死事例は、妊娠が計画外だったために周囲に相談できないまま妊娠を継続してしまったケースが多い。最悪の事態を防ぐには妊娠期からのケアが重要と同年に浜松市、12年に県が窓口を開設した。
 県の窓口は県助産師会が業務を受託し、週2回実施する。浜松市は平日、保健師と助産師が応対する。県への相談件数は年間150~170件で推移し、浜松市も年100件を超える。県への相談内容は「妊娠かどうか」が27%と最も多く、「中絶」と「体の状況」がそれぞれ17%で続く。担当者は「10~20代が半数を占めるが30代、40代以上も少なくない」と話す。
 県への相談の半数超はメールによるもの。誰にも知られずいつでも送れるが、直接話せないため、やりとりに時間差が生じる。宇田公美子助産師(55)=同市=は「文面は『生理が来ない。妊娠したかも。どうしたらいいか』などといった数行が多い」。少ない情報のなか、相談者に寄り添う難しさもある。「返信は『最終月経はいつ?』から。連絡が途切れないように。2人の命が懸かっている」と慎重を期す。
 中絶が可能なのは妊娠22週まで。相談時期によって支援の形も変わってくる。産んでも育てられないとすれば特別養子縁組なども視野に入る。昨年から一人で産科受診が困難な相談者に保健師が同行し、初回受診料を助成する事業を全県で行っている。
 相談事業の存在を周知する方法も課題に挙げられる。中学、高校の出張授業などで紹介したり、大学で案内チラシやカードを配布したりしているが「すぐ支援が必要な人には、どう届けたらいいか」と県担当者は苦心する。日常生活で目にする機会を増やしたいと、薬局やドラッグストア約80店の妊娠検査薬の売り場そばにカードを置いてもらう取り組みも続ける。
 男女を問わず、あらかじめ避妊や妊娠についての知識を得ていれば苦渋の選択を避けられる。宇田さんの「女性を犯罪者にしたくない。一人で悩まないで」の声は重い。問題の対象は女性だけではないと社会全体で認識を改める必要がある。

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