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特集 : こち女

「女性が輝く社会」へ 二つの国政選挙 議論すべきことは

 参院静岡選挙区補欠選挙(24日投開票)と衆院選(31日投開票)の二つの国政選挙が重なった本県。新型コロナウイルス禍で生活に影響を受ける女性が多い中、各立候補者は女性の就労環境改善やジェンダー平等の推進などを公約に盛り込み、選挙戦を戦っている。安倍政権の下で女性活躍推進法が成立して6年。「すべての女性が輝く社会づくり」は進んだのか。今求められる議論は何か。県内の3人の識者に聞いた。(伊豆田有希、大滝麻衣)
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 ■ジェンダー平等 国際基準に 静岡市女性会館館長 谷口年江さん
 安倍政権は「女性活躍」を掲げたが、活躍したくてもできない、そのスタートラインにすら立てない人たちがいる。女性就業者の半数は非正規で、キャリア形成の展望が見いだせない人も多い。コロナ禍では雇用の調整弁として、解雇やシフト減の対象になった。
 介護や育児など「ケア役割」を家族から期待され、働きに出たくても出られない女性たちがいまだにいる。女性相談には、生きづらさに苦しむ声も寄せられる。健全に機能していない家庭で育った影響もある。恵まれない境遇だったとしても、負の連鎖を断ち切り、挽回できる社会でないといけない。「自己責任」で片付けず、働きづらさを抱える人たちが孤立せず、社会から取り残されない仕組みが必要だ。
 ジェンダー平等に関しては、SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられ、東京五輪・パラリンピックを通して世間の関心が高まった。政治家には、国際基準を意識した政策を求めたい。国連女性差別撤廃委員会は日本に対し、夫婦別姓の導入など法改正を勧告している。昨年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では慎重派に配慮し、「選択的夫婦別姓」という言葉自体が削除され、ゆゆしき事態だ。
 ジェンダー平等は全ての施策において意識する必要がある。昨春の1人10万円の特別定額給付金は世帯主の口座に振り込まれ、経済的DV(ドメスティックバイオレンス)により妻が受け取れない事例があった。政策による成果や享受できるものが、性別によって偏りがないか、チェックが必要だ。
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 ■「安い労働力」活用に異議 元静岡地方最低賃金審議会会長 居城舜子さん
 安倍政権は「女性が輝く社会」などと心地よい言葉で情緒に訴え掛けたが、政策の本質は冷徹。配偶者控除や夫婦別姓の問題には切り込まず「男は仕事、女は家庭」という伝統的家族像を残した。そして女性を、相変わらず「安い労働力」として活用し続けているにすぎない。
 年金は少なく、男性の賃金も上がらない。女性が働き始める理由は、生計を営むため。2012年と19年を比べると、働く女性は約330万人増えた。特に60代前半と、M字カーブの底にいた子育て世代が増えた。しかし、女性の半数以上は非正規雇用のまま。コロナ禍では真っ先に解雇の対象になった。
 定年後も嘱託などで働く男性が増え、労働市場では非正規の女性と競合が生じている。企業は本来、将来性のある世代を採りたいはずだが、「子育てなどで、いつ休むか辞めるか分からない女性を育てる余力はない」という考えはいまだ根強い。
 企業の内部留保は20年度まで9年連続で過去最高額を更新した。一方、従業員の取り分を示す労働分配率は、先進国の中で急速に順位を落としている。日本企業は新たなもうけの領域を開拓できていない。だから女性を育てる機運も高まらない。
 人を育て、職場に還元させ、産業を高度化する。持続的な好循環を生むには、昇進機会や賃金の平等、男性育休取得促進を含めた職場でのジェンダー平等が不可欠だ。現行のように、女性を便宜的に活用する施策は経済成長の足かせにしかならないことは、世界中で立証されている。
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 ■配偶者控除 早急に撤廃を 人材育成の「るるキャリア」社長 内田美紀子さん
 女性活躍推進法をきっかけに、女性の登用を進めようという企業は確実に増え、係長や主任クラスの女性比率はじわじわと増えている。ただ、そうした管理職予備軍は増えても、課長以上に相当する管理職の増加は鈍い。
 背景に、以前から指摘される「マミートラック現象」がある。子育て中の女性はさまざまな部署を回って経験を積むのが難しく、広い部署を統括する管理職になれない。企業側の「女性には負担や責任の重い仕事は任せづらい」、女性側の「家事育児は女性が主体でやるもの」というアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を拭い去れないからだ。
 女性の登用は、ダイバーシティ(多様性)への入り口。多様性が進めば、職場環境や労務管理の改善につながる。結果、親の介護と仕事の両立に悩む男性など、全ての社員が働きやすくなる。多様な人材が能力を発揮できれば、イノベーションが生まれる。
 企業の中には、「法で義務付けられたから」と、仕方なく女性の登用を進める企業もある。本気度には差がある。しかし、企業が法に基づいて登用目標を明文化する効果はある。「目標を公表した。だから実行しよう」となる。その後企業がイノベーションに成功するかどうかの分かれ目は、「すべての人材を、能力ある個人として尊重できるかどうか」だ。
 政治に早急に求めたいのは、配偶者控除の撤廃。一定の収入を超えると納税や社会保険料が必要になる「壁」があるために、能力を持て余している女性がいる。もったいない。

 女性活躍推進法 安倍政権下の2015年に成立、施行。25年度までの時限立法。301人以上を雇う企業に、自社の管理職に占める女性比率など「女性の活躍状況」の把握と課題分析、課題解決に向けた行動計画の策定や公表などを義務付けた。22年4月からは101人以上を雇う企業にも適用される。優良企業は厚生労働大臣による「えるぼし認定」を受け、認定マークを自社商品などに載せてPRできる。

 

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