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特集 : こち女

「親ガチャ」を嘆かれたら キュレーター/読者の声②【賛否万論】

 自分で自分の親を選べない現実を、おもちゃを抽選する機械に例えた「親ガチャ」という造語がにわかに話題になっています。あなたは「親ガチャ」と聞いてどう思いますか? 8日付の独立型社会福祉士川口正義さん、15日付のゲームシナリオライター生田美和さんのインタビューを踏まえ、しずしんニュースキュレーターと読者のご意見を紹介します。


この言葉 なぜ使われるか想像を


キュレーター 水野綾子さん(熱海市)
熱海の企業と主に首都圏人材を“複業”でつなぐプラットフォーム「サーキュレーションライフ」代表。働き方を軸に活動。お寺の後継。3児の母


 「親ガチャ」。これほど世代や立場によって意見が割れる言葉もなかなかない。言葉としては気持ちの良いものではないかもしれない。だが、大人たちは「親にそんな言葉を使うなんてけしからん!」ではなく、子どもたちがなぜこの言葉を使い、SNS上で共感を生むのかを想像しないといけないと思う。
 一方的にこの言葉を否定している大人は、おそらく〝恵まれた〟環境で育ったのだろうと推測する。自身の家庭や周辺のごくごく一面しか見ずに発言しているのではないか(見ずに生きてこられたというのも〝恵まれて〟いる)。
 そして前提や時代が変化していることに気づいていない。日本の子どもの7人に1人が貧困状態と言われ、少子化は進んでいるのに児童虐待件数は増えている。データや統計上の話ではなく、私たちが暮らす地域で起こっていることだ。われ関せずといったパラレルワールドがあちこちで発生している。
 親に限らず、「もしこうだったら」と思うことは誰しもある。それこそ人生は全て「ガチャ」であるとも言える。どんなガチャを引いても、私たちは生きねばならない。だが、「現状を変えられるのは自分自身。前向きに頑張ろう」というのも、しっくりこない。自分の努力や能力を超えたところにある理不尽に対して、前向きに頑張る1択だとしたら、こんなに苦しいことはない。大事なのは、誰しもが打ちのめされずに生きていける社会であり、そのために必要なのは「多様な選択肢」に尽きるのではないか。そして画一的な考え方や価値観の押し付けではなく、そういう見解もあるのね、と受け取り合える社会ではないかと思う(理解はできないこともある。いったん受け取れるかどうかが大事だ)。
 世の中は、正しい、間違っていると白黒をつけられるほどシンプルにできていない。「自分の当たり前は、当たり前ではない」という〝当たり前〟のことを心に留める人が増えると、世の中はもう少し優しくなるかもしれない。
 最後に、もし自分の子どもにこの言葉を投げられたらと考えた。思うのは「苦しい思いをさせて申し訳ない」ということだ。親が良かれと思ってしたことでも、子どもが苦しいと思ったらもう駄目なのだ。親と子は生きる時代も背景も性格も何もかも違う。そして子どもの人生は子どものものだ。親の常識や成功体験を押し付けてはいけない。その前提のもと、お互いの考え方や違いを伝え、受け取り合い、関係性を深めていける時間を重ねていけたらと思う。これからを生きる年数は子どもの方が長く、子どもの方が未来に敏感だ。未来を生きる子どもたちから学べる人間でありたい。


現実受け止めているからでは


読者 オルヨ13さん(浜松市)50代
 いかにも現代的で軽さも感じますが、親と「ガチャ」を組み合わせる発想には感心しました。親に対する非礼が指摘されますが、この言葉はむしろ、ガチャを回す自分側に比重があるように思います。本来のようにやり直すことができず、引き当てた親との出会いを自分なりに受け止めようとするものではないか。そう捉えると、素直に尊敬したい気持ちになります。私はといえば、「どこかに本当の父母がいるはず」「目の前にいる親は仮面をかぶった別人だ」など、もっと親を否定し破壊するような発想でしたから。
 一方で、若い年齢でこのような言い方をしなければならないのはしんどいだろうなとも思います。そのため、この言葉の安全弁としての役割を考えます。自分の存在に罪悪を感じることは、生命や精神の危機を招く大きな条件の一つといってよいからです。病院や学校で「自分が生まれてこなければ親はもっと幸せに暮らせたのではないか」と話す若者は決して少なくありません。


わが子しっかり見つめるチャンス


キュレーター 藤田智彦さん(藤枝市)
フジドリームエアラインズ(FDA)機長。京都市出身。妻と息子2人。海上自衛隊を経てFDA設立に携わった。静岡空港を中心に福岡、鹿児島、熊本、出雲、札幌の各路線に従事。49歳


 身の回りでこの言葉を聞くことはまだあまりありませんが、人生の中間結果も出ていない若い子たちが使っているようです。当たり外れを決めているのは現時点での彼ら自身で、他の人から見たら受け止め方は違うかもしれません。また、外れを決め込む彼ら自身も、時がたてば自分は当たりだったと思うかもしれない。親世代の人と話をすると、子どもの頃に貧しくても皆が受け入れていた豊かさを感じます。
 若い人たちが、今輝きたい、今もてたい、と思う気持ちも分かります。彼らの物差しもあるのです。大人になるともっと大事なことがあると気付くのでしょうが、大人は親ガチャのせいにする子たちの信号と受け止め、批判する必要はないと考えます。親にとってはわが子をしっかり見つめるチャンスにもなります。
 もし子どもに親ガチャを嘆かれたら、「あなたがこの家を選んで生まれてきたのでは」と言ってあげたい。そこに生まれた理由がきっとあって、人生に必要な教えや経験をそれぞれ受け取っているはずです。外れだと感じている子たちには「不利な境遇と決めつけることはない」と大人が自信を持って言えることが大事です。その上でしっかり見守り、支えることが親の使命ではないでしょうか。人生の豊かさを測る物差しは長い人生の中で変わっていきます。当たりに変えようとするマインドをただ応援してあげてほしい。
 ただし、何ごとにも例外はあって、本当に大変な思いをしている子たちもいることでしょう。はずれじゃない景品にしてあげる世の中をつくることも大人の仕事です。


自己肯定感育むのが親の役目


キュレーター 菅沼泰久さん(湖西市)
土木、国際協力、農業、福祉などさまざまな分野に挑戦し、地元&世界への貢献を目指す45歳。2人の小学生の父親


 うちの2人の子どもたちはまだ小さいので幸い家庭で親ガチャの話題は出ていませんが、何年か先に「親ガチャ失敗した~!」と嘆かれたらショックですね。そうならないために、子どもたちと触れ合う時間を大切にして子どもの気持ちや考えをちゃんと理解してあげられるように日頃から心掛けたいです。また、「子は親の鏡」とよく言われますが、親から認められているという安心感を与えることで自己肯定感の高い子どもに育てることも大切だと思います。
 今の日本には、一度失敗したらそれで終わり、失敗は決して許されないという空気が漂っていて、親たちは自分の子どもに失敗をさせたくないと強く思いがちです。その結果、子どもの気持ちを理解することなく、親の身勝手な期待や価値観を子どもに押し付けてしまい、子どもに生きづらさを感じさせてしまうというのはよくあることだと思います。そういう親の支配に対する子どもたちの不満の吐き出し口として「親ガチャ」という言葉が広まっているように感じます。

キュレーター

 「しずしんニュースキュレーター」は、新聞記事や時事問題の“ご意見番”として、静岡新聞の記者が推薦した地域のインフルエンサーです。毎回それぞれの立場や背景を生かしたユニークな視点から多様な意見を寄せてもらいます。

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