熱海盛り土工事 業者への停止命令見送り 市長「一定の安全性判断」

 熱海市伊豆山の大規模土石流で、熱海市と静岡県は18日、起点の盛り土を造成した業者への対応経緯に関する調査の中間報告を行った。斉藤栄熱海市長は、盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)に県土採取等規制条例に基づく措置命令の発出を見送った理由を「不十分ながら防災工事を実施し、一定の安全性が担保されたと判断した」と説明した。ただ、この工事は未完成で、行政責任については「第三者の判断が必要」と明言を避けた。

盛り土造成の経緯を説明する斉藤栄市長=18日午後、熱海市役所
盛り土造成の経緯を説明する斉藤栄市長=18日午後、熱海市役所
熱海市伊豆山の盛り土を巡る主な経緯
熱海市伊豆山の盛り土を巡る主な経緯
盛り土造成の経緯を説明する斉藤栄市長=18日午後、熱海市役所
熱海市伊豆山の盛り土を巡る主な経緯

 市と県は起点の土地改変が始まった2007年4月以降、同社に対し同条例や森林法などに基づく行政指導を行った。しかし、同社は罰則が罰金20万円以下の同条例に基づく市の指導に従わないまま、11年2月に土地を現所有者に譲渡した。
 同条例では開発行為の面積が1ヘクタール未満の場合、申請の届け出先が市町になる。指導や命令の対象は届け出の提出者になるため、市は土地が譲渡された後も同社に土砂搬入の中止を要請した。それでも一向に回答が得られなかったため、11年6月に措置命令を視野に対応することを決めた。
 これに対し、同社は翌7月に土砂流出防止や排水対策、のり面崩壊などの対策を実施すると市に言明した。しかし、排水設備工事は完了せず、約2カ月で中止になったことが既に判明している。
 斉藤市長は「今から思えば行政側の厳しい対応を避けるための巧妙な手口だったと言わざるを得ない。忸怩(じくじ)たる思いがあるが、当時の判断が誤っていたとまでは言えない」と述べた。
 一方、県庁で記者会見をした難波喬司副知事は市の対応について「命令を出す必要はあった」との見解を示した。その上で、同社が行政指導に従ってこなかった経緯に触れ「従っていれば今回の惨事は起きなかっただろうが、(命令に)業者が従っていたかは別問題だ」と指摘した。
 県と市は調査を継続し、12月に設置する第三者委員会に諮る。第三者委は行政の一連の対応が適切だったかどうか、本年度内に結論を出す予定。

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