J3沼津が連携活動 東海地域で防災力強化【解説・主張しずおか】

 サッカーJ3アスルクラロ沼津が、地域住民や行政、企業、学校などと3者以上で協働して地域課題の解決を目指すJリーグの社会連携活動「シャレン!」に取り組んでいる。南海トラフ巨大地震への備えの大切さが叫ばれる中、地域と共存する団体として防災力強化に注力する。他のクラブとの連携を強め、サッカーという競技にとどまらない地域活性化につなげてほしい。

ハザードマップを見て危険箇所について話し合う「全力防災隊」のメンバー=7月下旬、沼津市内
ハザードマップを見て危険箇所について話し合う「全力防災隊」のメンバー=7月下旬、沼津市内

 J3沼津の活動の柱は、東海地域6クラブが連携して地域住民の防災意識を高めるプロジェクト「ソナエル東海」。J3沼津が地元自治会や沼津市と連携し、子ども向け防災マップを制作したことをきっかけに2020年9月に始まった。
 J3沼津はサポーターらでつくる「全力防災隊」を組織し、地域の防災リーダー育成も手掛ける。他クラブも防災啓発品の製作や販売といった活動を展開する。6月には災害時に必要な知識を問う「ヤフー防災模試ソナエル東海杯」を催し、6クラブで受験者数を競った。J3沼津の取り組みは全クラブを巻き込んだ防災活動へと発展し、9月にはJリーグが全57クラブ参加の「ソナエルジャパン杯」を開催するに至った。
 Jリーグ社会連携室によると、「シャレン!」としてクラブ間で協力体制を構築する例はソナエル東海が初めてという。鈴木順室長は「試合は敵同士だが、社会連携では手をつなぐことができる。Jリーグの、地域に対する新たな価値の提供の仕方を教えてもらった」と評価する。
 プロジェクト開始から1年が経過したが、クラブ同士の連携実績は少ない。J3沼津の担当者は「横のつながりで防災イベントができないか模索しているが、コロナや距離的な問題で難しい」と嘆く。J3沼津に協力する沼津市の担当者は「複数団体が主体となることでお互いが成果を求め、さまざまな属性の人を引きつけられる」と社会連携活動の意義を語る。
 J3沼津は、脳性まひのある子どもがプレーする「CPサッカー」、環境保護、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の啓発などさまざまな活動を展開してきた。クラブの垣根をなくしていけば、活動はさらに広がり、啓発につながる。サポーター同士が接点を持つ機会も生まれる。発信力を持つJクラブとして、地域の枠を超えて課題解決を目指す好循環を生み出してほしい。

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