裾野市の行財政構造改革 市民理解へ説明丁寧に【湧水】

 裾野市は、財政調整基金(財調)に頼った財政体質からの脱却に向け、新たな行財政構造改革計画をまとめた。ただ、数値目標が示されないなど、物足りなさを感じた。実効性を高めるため、進捗(しんちょく)を検証できる具体的な目標を設定し、市民の理解を得られるよう丁寧な説明を進めてほしい。
 市は2月、独自の財政非常事態宣言を発令した。市の貯金に当たる財調の取り崩しなどの要素を除いた実質単年度収支は12年連続赤字。このままでは財調が数年後に払底するとの懸念から宣言に踏み切った。
 財政力指数は08年度に1・60と全国で上位だったが、20年度は0・99まで低下した。歳入を見ると、リーマン・ショックを皮切りに法人市民税法人税割の税率引き下げ、コロナ禍、大手メーカーの工場閉鎖の影響で、税収が大きく落ち込んだ。歳出は、1990~2000年代に整備した公共施設の維持管理や大型公共事業による起債などで、今も経常経費がかさんでいる。
 家計に例えるなら、まず年収が1600万円から1千万円に落ち込んだ。1千万円でも十分に高収入だが、ローン返済の負担は重く、ほかの出費も給料の減額分ほど節約できていない。毎年、貯金を切り崩しながらやりくりしている状態だ。
 20年度決算で将来負担比率は51・4%、実質公債費比率は9・9%。ともに早期健全化基準を大きく下回る。財政破綻する状況ではないが、現状の財政力に見合った体質への改善は必要だ。
 計画では、27年度に実質単年度収支の均衡を目指す。「公共施設の在り方の見直し」「総人件費の削減」など六つの視点に沿って、文化・スポーツ施設の改修抑制や職員手当の削減などの取り組みを盛り込んだ。一方で「検討する」との表現も目立ち、具体性に欠ける印象は否めない。せめて六つの視点ごとに削減額の目標を定めるべきだった。
 市は本年度中に行革について市民への説明の機会を設ける方針。事業の廃止や縮小は市民の十分な理解がなければ人口流出を招きかねない。分かりやすく財政状況や行革の必要性を伝え、市民の意識を変えなければならない。財政に関心を持ってもらえれば、今回の行革だけでなく、市民協働の機運も高められるはずだ。
 

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