家族で相次ぎ感染、過酷な1カ月 「ワクチン頼み」の政府に疑問【検証新型コロナ 静岡県内第5波㊤】

家庭内感染した家族。過酷な1カ月を振り返った=9月下旬、静岡市駿河区
家庭内感染した家族。過酷な1カ月を振り返った=9月下旬、静岡市駿河区

 過酷な1カ月だった。静岡市駿河区に住む会社員の男性(49)はこの夏、新型コロナウイルスの家庭内感染を経験した。
 8月上旬、自身と妻(41)が相次いで感染。ともに軽症で、生後10カ月の長女を抱え自宅療養になった。
 3度の食事に風呂、おむつ替え、寝かしつけ…。夫婦は静岡県外出身で頼れる身内が近くにいない。ただでさえ大変な世話をウイルスがうつらないよう神経をとがらせ、さらに発熱に耐えながらこなし続けた。「子どもは重症化しないと言われても『かかっていい』と思う親はいない」
 それで終わらなかった。男性は発症から9日目に血中酸素濃度が80%台に低下。病院の集中治療室(ICU)に運ばれ、「死を意識した」。この頃、妻は病院の勧めで長女と入院したが、その後、とうとう長女も感染した。
 第5波で県内は夫婦のような子育て世代の感染が急増。30~40代と未成年の合計は全体の6割近くに達した。一方、高齢者の感染は激減した。
 「ワクチンに頼りすぎたと思う」。9月初めまでに3人とも回復し、日常を取り戻した今、男性は一連の国のコロナ対策に首をひねる。
 「収束への切り札」と位置付けたワクチンで一点突破を狙うあまり、検査や医療体制の拡充がおろそかになったのではないか。臨時医療施設整備が議論されたのは第5波のさなか。かねて指摘されてきた保健所の負担は一層増え、濃厚接触者を追えなくなった地域があった。「患者を速やかに隔離できなければ家族は全滅(全員感染)する。対応を平時に考えておくべきだった」
 静岡市に住む別の子育て中の女性(39)は「第5波の混乱は政治が招いた」と手厳しい。
 ワクチン接種は11月の希望者2回完了が見えてきたが、都道府県への供給は夏場にいったん大きく停滞した。そもそも日本は欧米に比べ接種開始が2カ月程度遅れた経緯もある。
 ワクチン調達さえ順調だったら感染爆発はなかったはず-。女性は「市町で接種率に格差も生じ、静岡市は予約すらできない状況が続いた。結果的に感染しなかったが、不幸に感じた」と話す。
 県幹部は、64歳以下の接種について「どの年齢層から打つべきか国は戦略性に欠けた」と指摘する。その上で、年内にも始まる見通しの3回目接種を念頭に注文も忘れなかった。「対象者や供給量などがまだ示されず、市町は準備できない。早く全体像を」
      ◇
 新型コロナウイルス第5波の爆発的な感染は深刻な病床逼迫(ひっぱく)を招き、政府や自治体による政策の課題を浮き彫りにした。次の流行に必要な備えは。参院補選、衆院選と国政選挙が続く中、感染の現場で関係者の思いを取材した。

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