逢初川復旧説明会 行政と被災者に温度差 熱海・土石流災害
熱海市と静岡県は9日、同市伊豆山の大規模土石流の現場を流れる逢初(あいぞめ)川の復旧に関する初の説明会を市内で開いた。斉藤栄市長は「単に元の伊豆山に戻すのではなく、地域の発展に向けた契機」と位置付け、まちづくりの構想を示した。しかし被災者からは「まだ将来のことは考えられない」「土石流の原因と責任を明確にする方が先だ」との声が相次ぎ、行政との温度差が浮き彫りになった。

説明会には警戒区域内に住んでいた住民や地権者ら185人が出席した。市が本年度中に策定する復興まちづくり計画で、県が担う逢初川の改修はその中心的事業となる。担当者は改修後の河川は開水路を基本とし、カーブを緩やかにして30年に1度降るレベルの雨量を安全に流せる川幅に広げると説明した。本年度内に測量などを行い、来年4月から2年程度かけて改修する工程案も示した。
斉藤市長は今後のまちづくりについて、「(応急仮設住宅から)伊豆山に戻りたいと思っている人が戻れるようにする」と強調した。一方で、戻りたくない人の土地を生かす重要性も指摘し、交流拠点を整備したり歴史文化を活用して交流、定住人口を増やしたりする構想を語った。
これに対し、妻を亡くした田中公一さん(72)は「まだ自宅があった場所に入ることもできない中で、先のことが考えられない。行政の思いにずれを感じる」と話した。娘を失った70代女性も「なぜ娘が死ななければならなかったのか考え続ける日々。将来のことなど想像できない。遺族の気持ちをくんでほしい」と訴えた。
説明会終了後、斉藤市長は「被災者の生活を支えることと地域の再生を同時に進めなければならない。被災者ときめ細かく対話し、丁寧に進めていきたい」と話した。
■「土石流発生しにくい」 第2の盛り土巡り県が認識
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点南西にある太陽光発電所付近に多量の土砂が不適切に投棄されている問題で、静岡県熱海土木事務所は9日に同市で開かれた説明会で、当該地は雨水や地下水が集まりにくいことなどを説明し、「大量の土砂が土石流となって流れる現象は発生しにくい」との認識を示した。
当該地は土石流起点の土地と同じ人物が所有している。地元住民は「第2の盛り土」と呼び、災害の発生を懸念している。
同事務所の古屋徹之所長は、第2の盛り土は尾根の斜面側面にあり、「表流水や地下水は(大規模土石流の)起点方向に集まる」と説明。第2の盛り土の土砂は上から落としただけで厚みがない状態で、「強い雨で表層の土がはがれるか、崩れた土が泥水になって少しずつ流れる」との見方を示した。
今回の土石流と同様の災害が起きる可能性は低いものの「リスクはゼロではないので土砂の撤去など早急な対策が必要」と述べた。