ボトルキャップ回収通じ就労創出 環境と福祉の連携モデルに【解説・主張しずおか】

 浜松市内で、ペットボトルのキャップ回収を通じた障害者就労支援の取り組みが地道に進められている。コロナ禍の影響もあり、企業の障害者雇用環境は依然、厳しい状況が続く。ただ、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)への関心が少しずつ高まる中、環境、福祉という複数の課題の改善につながる「環福連携」のモデルとして注視したい。

キャップ回収を通じた障害者の就労機会創出に取り組む昭栄商会=7日、浜松市東区
キャップ回収を通じた障害者の就労機会創出に取り組む昭栄商会=7日、浜松市東区

 浜松市東区の「昭栄商会」は主に輸送機器や楽器メーカー向けの部品、材料を取り扱う総合商社。リサイクル製品事業の一環で2010年、ペットボトルキャップによる障害者の就労機会創出に乗り出した。同社が回収した使用済みのプラスチック製品を新たな製品材料として販売するマテリアルリサイクルの過程で、障害者が作業の一端を担っている。
 障害者が受け持つ作業は、キャップを再利用する際に必要な色分けや異物の除去、簡易な粉砕など。天竜厚生会(浜松市天竜区)が運営する障害者支援施設「美浜」では、知的障害のある約30人が自立に向けた活動の一環として作業に当たる。
 松崎英嗣施設長は「作業を通じて施設の利用者が社会の一員であることを実感し、自信を持つことにつながれば」と意義を語る。
 キャップ回収については、賛同した企業や住民からの寄贈が徐々に増え、20年度の総数は約2億8千万個に上った。同施設など浜松、静岡、沼津市の六つの障害者支援施設に送られている。小中学校からの寄贈もあり、子どもたちが社会貢献の形を学ぶ一つの学習材料という側面も持つ。
 だが、こうしたリサイクル、障害者支援の取り組みにも、輸送費や人件費などのコストは掛かる。活動を広げるには、地域、企業、行政のより深い連携が求められる。
 ペットボトルなどプラスチックごみによる環境問題は海洋汚染も含めて世界規模で拡大し、生態系への影響が懸念されている。国内各地でレジ袋の有料化やストローの廃止などごみ減量の取り組みが進むが、これと並行し、ごみを資源として循環させることも市民レベルで考えたい。
 浜松市は18年、「SDGs未来都市」に選ばれた。地元企業によって障害者の社会参画を促しながら、地球環境保全に向けた取り組みが展開されていることは大きな意味を持つ。産業都市として発展した浜松から、環福連携の事例が次々と芽吹き、育ってほしい。

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