大自在(10月5日)岸田内閣発足

 「もし…したら」というのは、よく使う言い回しだ。ただ、仮定にも程度があり、そんな突拍子もないことをと一笑に付してやり過ごすこともあれば、気付きが得られることもある。
 「若[も]し」は万葉集にも見られる。徒然草には、ほぼ万能だが変わり者の高僧、盛親僧都[じょうしんそうず]の話に出てくる。盛親はある法師に「しろうるり」とあだ名を付けた。それは何のことかと問われると、「私も知らない。もしあるとしたら、この法師の顔に似ているだろう」。逆転の発想が面白い。
 盛親が常識外れの言動をしても人に嫌われなかったのは、人徳のなすものかと吉田兼好はつづっている(第60段)。内外の政界の「変人」や「異端児」の顔が次々に浮かぶが、徳には結びつかない。
 自民党総裁選の折、小説「もしも徳川家康が総理大臣になったら」(真辺明人著、サンマーク出版)が注目されたという。人工知能(AI)など最先端技術で歴史上の人物を復活させた「最強内閣」が新型コロナ禍に立ち向かう。
 使命は〈コロナ禍を収束させ、国民の信頼を取り戻す〉。家康首相が要所で「折り合い」をつけていく展開は荒唐無稽とばかり言えない。現実世界では昨日、岸田文雄自民総裁が第100代首相に選出され、若手や女性を登用した新内閣が発足した。力量は未知数だが、国民の期待度は衆院選に現れよう。
 小説で坂本龍馬官房長官は、自分たちが目指した世の中と現代社会の乖離[かいり]を嘆く。「不安とは、何もせんもんがかかる病じゃ」「この時代のもんはあまりに人任せじゃ」。反論は、投票からだ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ