社説(9月28日)「演劇の都」構想 若者への浸透が鍵握る

 演劇をはじめとした舞台芸術を核にした静岡県の「演劇の都」構想に基づく取り組みが本格化している。成否の鍵の一つが若者への浸透だ。
 舞台芸術は「演じる」「見る」だけでなく「学ぶ」という関わり方もできる。劇場に足しげく通うファンのみならず、誰もが当事者になるための幅広いメニューが求められる。
 若者と演劇の接点を増やすために、まずは県内約60高校にある演劇部の活躍に期待したい。近年、高校演劇は認知度が高まっている。大手誌の連載漫画の題材になったり、脚本がプロ劇団や映画に採用されたりしている。
 「文化部のインターハイ」とされる全国高校総合文化祭の演劇部門では2020年度、星陵(富士宮市)など出場校の演目が3カ月、ウェブ配信された。本県でも秋の演劇部の県大会などを機会に、配信を後押ししてはどうだろうか。
 演劇の妙味はあくまでライブ鑑賞にあるが、裾野の拡大を目的に多くの人の目に触れる機会を増やす試みは「都」づくりへの関心を高める。各校のレベルアップにもつながるだろう。
 演劇は他者や社会との関わりを学ぶツールになり得る。新学習指導要領に記載された「アクティブ・ラーニング」とも親和性が高い。県舞台芸術センター(SPAC)の俳優や制作陣の知見を有効に活用したい。県立の劇団がある本県の強みを生かす好機だ。
 県は4月、世界で活躍する演劇人育成を目指す通年のアカデミーを開講した。SPACの俳優やスタッフを講師に迎え、高校生16人が座学や実技のプログラムに臨んでいる。
 SPACはこのほか、03年度から生徒を劇場に招く中高生鑑賞事業を実施している。19年度からは、俳優らが学校を訪ねて演劇やダンスを教えるワークショップも回を重ねる。
 アカデミーで蓄積された人材育成ノウハウが、演劇の裾野を広げる活動に還元されるのが理想的な形だろう。県とSPACの緊密な連携が必要だ。
 県は県立高校の演劇科新設も見通す。専門人材の育成を打ち出せば、県外の若者が本県を目指すきっかけになり得る。県教委と足並みをそろえ、早急に態勢を整えてほしい。
 20年度の演劇団体調査によると、県内では89団体が活動する。県は7月、劇団の概要や公演情報をまとめたサイトを開設した。今のところ、文字情報の更新にとどまり、写真の活用やレイアウトの工夫など見やすさ、使いやすさには改善の余地がある。若い世代の意見も取り入れ、ポータルサイトとしての価値を高めてほしい。

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